第4編 第3章 社債権者同士で話し合って
第四編 第三章 社債権者集会

第5編 第1章 組織の形を変えるには
第4編 第2章の2 社債の管理をアシストする人
社債の種類ごとに社債権者集会を
- 第715条
- 発行された社債の種類ごとに、その社債権者は集まって社債権者集会を組織してください。
原文
社債権者集会で決議できること
- 第716条
- 社債権者集会では、社債権者集会での同意を得る必要がある案件の他、社債権者の利害に関わる案件について決議をすることが認められます。
原文
社債権者集会の招集
- 第717条
- 必要なときにはいつでも社債権者集会を招集することが認められます。
- 2
- 通常、社債権者集会は社債発行会社か社債管理者が招集します。
- 3
- 次の場合は社債管理補助者にも社債権者集会の招集が認められます。
- 一
- 社債権者側から社債権者集会招集を要請された場合。
- 二
- 社債権者集会の同意を得る必要が生じた場合。
原文
社債権者による社債権者集会の招集要請
- 第718条
- 特定の社債について発行額の10%以上を保有している社債権者は、社債発行会社や社債管理者に対して社債権者集会の招集を要請する権利があります。
招集をするにあたっては、社債権者集会で話し合うテーマや招集が必要な理由を明らかにしてください。 - 2
- 10%の社債発行額を判定する場合、社債発行会社が所有している分は総額の中にはカウントしません。
- 3
- 次の状況になると、招集を要請した社債権者は裁判所の許可を得た上で、自ら社債権者集会の招集をすることが認められます。
- 一
- 招集を要請したのに、いつまで経っても社債権者集会の招集手続きが行われない場合。
- 二
- 招集をした日から8週間以内の日付の通知が発せられない場合。
- 4
- 無記名社債の保有者が社債権者集会の招集を要請したり、実際に招集をする場合には、保有している社債券を社債発行会社や社債管理者、社債管理補助者に提示する必要があります。
原文
社債権者集会を招集するにあたり決めておくこと
- 第719条
- 社債権者集会を招集するには、次の事項を決めておいてください。
- 一
- 社債権者集会の日時と場所
- 二
- 社債権者集会で話し合うテーマ。
- 三
- オンラインでの議決参加を可能とする場合は、可能であること。
- 四
- その他、法務省令で規定している事項。
原文
社債権者集会の招集の通知を
- 第720条
- 社債権者集会の招集通知は原則的に書面で行われます。
社債権者集会の開催2週間前までに、連絡先の判っている社債権者と社債発行会社には招集者から招集通知が送付されます。
社債管理者や社債管理補助者が設定されている場合には、同様のタイミングで招集通知が送付されます。 - 2
- 事前に通知を受ける側の了解を得ていれば、社債権者集会の招集通知は政令の規定に基づいたデジタル情報で行うことが認められます。
デジタル情報として社債権者集会の招集通知を送信した場合、書面での招集通知は送付する必要がなくなります。 - 3
- 書面で行うにしても、デジタル情報で行うにしても、社債権者集会の招集通知には、通知事項として開催日時と場所、話し合いのテーマ、オンラインでの議決参加の可否、その他法令で規定している事項を掲載してください。
- 4
- 無記名式社債券に対する社債権者集会の招集には、開催日の3週間前までに公告を行ってください。
その公告には、社債権者集会の招集をすることを伝えるとともに、開催日時などの通知事項を掲載してください。 - 5
- 社債権者集会の招集に関する公告は、社債発行会社がふだん利用している公告の方法で行ってください。
社債発行会社以外の人が社債権者集会の招集に関する公告をデジタル情報で行う場合は、官報に掲載してください。
原文
招集通知には、必要な情報と投票するための書類を
- 第721条
- 連絡先が判っている社債権者に対する社債権者集会の招集通知には、次の2つの内容を記載した書面も同封して送ってください。
- 「社債権者集会参考書類」:
議決権を行使する際に参考となる情報が記載された書類 - 「議決権行使書面」:
自分の意思を議決権として行使するための書類
- 「社債権者集会参考書類」:
- 2
- 招集通知をデジタル情報で行う場合は、社債権者集会参考書類や議決権行使書面もデジタルで送付してください。
しかし社債権者に「書面がいい」と要望された場合は、必ず書面で対応してください。 - 3
- 公告をしたことにより、無記名式社債の社債権者からレスポンスがあったら直ちに「社債権者集会参考書類」と「議決権行使書面」をその社債権者に届けてください。
- 4
- 公告によりレスポンスがあった社債権者に対しても、社債権者の承諾があれば、社債権者集会参考書類や議決権行使書面もデジタル情報でお届けすることが認められます。
原文
オンラインでの議決参加ができるように
- 第722条
- オンラインでの議決参加を可能とする場合、社債権者集会のデジタル情報での招集通知の了解している社債権者にはオンラインでの議決参加ができるように取り計らってください。
- 2
- オンラインでの議決参加を可能とするケースに、社債権者集会の招集通知は書面で行っている社債権者が社債権者集会の1週間前までにオンラインでの議決権参加を希望した場合、オンラインでの議決参加ができるように取り計らってください。
原文
社債権者集会の議決権
- 第723条
- 社債権者集会における議決権は、社債権者が所有する社債の合計金額に比例して割り当てられます。
- 2
- 社債発行会社が自己所有している社債には社債権者集会における議決権は割り当てられません。
- 3
- 無記名社債の社債権者が議決権の行使をするためには、社債権者集会の1週間前までに招集者に対して自分の持つ社債券を提示しておいてください。
原文
社債権者集会での決議
- 第724条
- 議決権を行使できる人を《議決権者》といいます。
次項の例外を除き、社債権者集会に出席した議決権者たちの持つ議決権の1/2以上の同意を得ると、社債権者集会の決議は可決となります。 - 2
- 次に該当する議案を決議するには、出席した議決権者たちの持つ議決権の2/3以上の同意を得た上に、それが欠席者の議決権も含めた全ての議決権の1/5以上の同意が必要となります。
- 一
- 社債に関する支払いの猶予や、社債の責任免除、債務や債務不履行に関するトラブルの和解や訴訟、社債発行会社の破産手続きへの対応、会社再生や会社更生・特別清算の手続きへの対応についての議案。
- 二
- 社債権者集会での決議を必要とする以下の各議案。
- 社債管理者に与えられた権限の行使についての規定。(第706条第1項)
- 社債権者の利益に関わることで、社債券管理者に与えられた権限の行使についての規定。(第714条の4第2項第三号に関わる第714条の4第3項)
- 代表社債権者を決めることについての規定。(第736条第1項)
- 社債権者集会の議決により執り仕切ってもらう人を決めてもかまわないことについての規定。(第737条第1項ただし書)
- 代表社債権者や決議を執り仕切る人を解任したり、委任する内容を変更できることについての規定。(第738条)
- 3
- 社債権者集会の招集通知に記載されていないテーマは、社債権者集会で決議をすることは認められません。
原文
代理人に社債権者集会を委ねるには
- 第725条
- 社債権者が議決権の行使を代理人に委ねることが認められます。
議決権を代理人に委ねるには、招集者に代理人の委任状を提出してください。 - 2
- 代理人の委任状は、社債権者集会が開催される毎に提出する必要があります。
- 3
- 招集者の承諾があれば、書面の委任状を提出する代わりに、委任状の内容をデジタル化して招集者に送信すれば委任が認められることになります。
- 4
- 社債権者集会の通知をデジタル情報で受け取っている社債権者に対しては、正当な理由が無い限り、デジタル化した委任状の提出についての承諾を拒むことは認められません。
原文
書面による議決権の行使
- 第726条
- 社債権者集会に出席しなくても、書面を使って議決権を行使することが認められます。
- 2
- 社債権者集会に出席しないで議決権を行使するには、議決権行使書面に必要な事項を書き込んで招集者に提出してください。
提出期限は法務省令で規定されているので、それに間に合わせる必要があります。 - 3
- 書面による議決権を行使した人の分も、決議に必要な議決権の額に加算します。
原文
デジタルによる議決権の行使
- 第727条
- 招集者が承諾している場合に、社債権者集会に出席しないでデジタルで議決権を行使するには、オンラインで必要な事項を入力して招集者に送信してください。
提出期限は法務省令で規定されているので、それに間に合わせる必要があります。 - 2
- 社債権者集会の通知をデジタル情報で受け取っている社債権者に対しては、正当な理由が無い限り、デジタル化した議決権の行使についての承諾を拒むことは認められません。
- 3
- デジタルで議決権を行使した人の分も、決議に必要な議決権の額に加算します。
原文
社債権者による賛成と反対の議決権行使は
- 第728条
- 全ての議決権を必ずしも同じ賛否に投票する必要はなく、議決権を賛成と反対に分けて投じてもかまいません。
場合、社債権者集会の三日前までに招集者に対して、理由を添えて、賛成と反対の両方に議決権を投じるつもりであることを伝える必要があります。 - 2
- 賛成と反対の両方に議決権を投じた場合、招集者がこの投票を拒否することが認められます。
ただし、この社債権者が複数の人による共有社債券の代表者である場合は、賛成と反対の両方に議決権を投じても招集者に投票を拒否されることはありません。
原文
社債発行会社や管理者の出席
- 第729条
- 社債権者集会には、社債発行会社の代表者や社債管理者、社債管理補助者、またそれぞれの代理人にも出席が認められます。
また、出席をしないで書面で意見を表明することも認められます。
ただし、意見や利益が一致しないため裁判所に特別代理人選任の申立をするために開く社債権者集会には、社債管理者や社債管理補助者は出席が認められません。 - 2
- 社債権者集会の招集者が「必要だ」と判断したら、社債権者集会に社債発行会社の代表者やその代理人に出席を要請することが認められます。
社債権者集会において「必要である」と決議されたら、社債権者集会に社債発行会社の代表者やその代理人に出席を要請することが認められます。
原文
もっと話し合いの時間が必要であれば
- 第730条
- 社債権者集会での話し合いにもっと時間をかける必要がある場合、社債権者集会の延期や続行の議決を行います。
延期や続行が決議されたら、それまでに決めていた開催の日時や場所、設定していたテーマ、オンライン参加の可否などにこだわらず、話し合いを続けることが認められます。
原文
社債権者集会の議事録
- 第731条
- 社債権者集会では招集者が議事録を作成することになっています。
議事録の内容について詳しいことは法務省令で規定されています。 - 2
- 社債権者集会の議事録は、社債権者集会の日から10年後まで社債発行会社で保管されます。
- 3
- 社債管理者、社債管理補助者、社債権者であれば社債発行会社の営業時間内であれば次の請求をすることが認められます。
- 一
- 社債権者集会の議事録の書面を閲覧したり、コピーを取ること。
- 二
- 社債権者集会の議事録のデジタルデータを、デジタルデバイスを使って閲覧したり、コピーやプリントアウトをすること。
デジタルデータの閲覧方法については法務省令で規定されています。
原文
決議は裁判所の認可を
- 第732条
- 社債権者集会での決議は、閉会してから1週間以内に招集者によって裁判所に対して認可の申立をすることになっています。
原文
決議の認可が下りないケース
- 第733条
- 次のケースに該当すると、社債権者集会の決議についての認可が下りません。
- 一
- 債権者集会の招集方法や決議の進め方が法令に違反したり、社債募集の際に取り決めた内容として公表された内容と異なっていたケース。
- 二
- 不正な進め方で決議が成立したケース。
- 三
- 決議があまりにも不公正なケース。
- 四
- 特定の社債権者の利益を優先して、その他大勢の社債権者の利益をないがしろにしたケース。
原文
社債権者集会の決議が有効に
- 第734条
- 裁判所が認可を下ろさないと、社債権者集会の決議は有効になりません。
- 2
- 社債権者集会の決議は、その社債を所有する全ての社債権者に対して同じように効力を発揮します。
原文
裁判所が認可をしても、しなくても
- 第735条
- 社債権者集会の決議についての申請に対して、裁判所から「認可」または「不認可」の決定が出されたら、どちらの結果であっても社債発行会社によってその決定を公告することになります。
原文
全員が同意なら社債権者集会をわざわざ開催しなくても
- 第735条の2
- 社債権者集会で話し合うテーマについて、全ての議決権者である社債権者が事前に書面やデジタルでの投票により同意の意思を示した場合、あえて社債権者集会を開くまでもなくそのテーマは可決となります。
- 2
- 事前の書面やデジタル投票によりテーマが可決となった場合の書面やデジタル記録については、社債発行会社の本社にて可決となった日から10年間は保管してください。
- 3
- 社債管理者や社債管理補助者、社債権者は社債発行会社の営業時間内であれば次の請求をすることが認められます。
- 一
- 社債発行会社にて保管される可決となった場合の書面を閲覧したりコピーをすること。
- 二
- 社債発行会社にて保管される可決となった場合のデジタル記録を閲覧したりコピーをすること。
- 4
- 書面やデジタルでの投票によりテーマが可決した場合は、裁判所に可決の認可の申し立てをする必要はありません。
裁判所に認可が下りないことを心配する必要はなく、認可が下りないせいで議決が無効になる心配もありません。
認可の申し立てをしないので、その結果を公告する必要もありません。
原文
代表社債権者を選ぶと
- 第736条
- 社債権者側の意見を柔軟に対応できるように社債権者の中から代表者を選出して《代表社債権者》になってもらうことがます。
代表社債権者は一人だけでもいいし、複数人を選出してもかまいません。
代表社債権者として認められるには社債権者集会での決議を得る必要があります。
ただし少なくとも未償還の社債発行総額の内、少なくとも0.1%以上の社債を所有していなければ、代表社債権者にはなれません。
代表社債権者を選出したら、社債権者集会で話し合うテーマの落とし所は代表社債権者に決めてもらうように任せることになります。 - 2
- 0.1%の社債発行額を判定する場合、社債発行会社が所有している分は総額の中にはカウントしません。
- 3
- 代表社債権者が2人以上いる場合、その代表者としての意見を一本化するには原則として過半数を得た側の意見を採用します。
ただし、過半数以外の方法を用いて意見を一本化することをあらかじめ決めておくことも認められます。
原文
社債権者集会で決議されたテーマを執り仕切るのは
- 第737条
- 次の各ケースにおいて社債権者集会で決議されたテーマは、それぞれに記載された人が執り仕切ることになります。
ただし、社債権者集会の議決によりここに記載されていない人に執り仕切ってもらうようにすることも認められます。 - 一
- 社債管理者が置かれているケース。社債管理者。
- 二
- 社債管理補助者が置かれていて、社債管理補助者の権限に関わるテーマが決議されたケース。社債管理補助者。
- 三
- 一、ニに該当しないテーマが決議されたケース。代表社債権者。
- 2
- 代表社債権者や、社債権者迂回で決議されたテーマを執り仕切ることになった人には、社債管理者に対する次の規定が同じように適用されます。
原文
代表社債権者や決議を執り仕切る人の解任や委任内容の変更は
- 第738条
- 代表社債権者や決議を執り仕切る人は社債権者集会の決議を得ることにより、どのようなタイミングであっても解任したり、委任する内容の変更をすることが認められます。
原文
支払いが滞っている社債発行会社に対して
- 第739条
- 社債の利息の支払いが滞ったり、定期的に社債の一部を償還していくことになっている場合にその償還が滞ったら、社債権者集会を開くことになります。
決議を得て代表社債権者としてその決議を執り仕切ることになったら、社債発行会社に書面で次の通知をすることになります。- 決められた期限内に支払いや償還を行うこと。
- 決められた期限内に支払いや償還が行われなかったら、社債の償還と利息の全額を一括で支払ってもらうことになること。
- 2
- 支払いや一部償還が滞っている社債発行会社に対する通知は、社債発行会社側の了承が得られれば、政令の規定に基づいた電子メールなどのデジタル情報で行うことが認められます。
デジタル情報で社債発行会社への通知を送信した場合、書面での通知は送付する必要がなくなります。 - 3
- 決められた期限が過ぎても支払いや償還が行われなかったら、社債発行会社は社債の償還と利息の全額を一括で支払うことになります。
原文
債権者が社債発行会社に異議を申し立てる場合には
- 第740条難文
- 次の条文の規定に従って、社債権者が社債発行会社に対して異議を述べるためには、社債権者集会での決議を必要とします。
社債権者集会を開催するために時間がかかることが懸念される場合、利害関係者が裁判所に対して異議を述べるための期間の延長についての申立をすることが認められます。 - 2
- 社債権者のためならば、社債管理者は社債発行会社のやることに異議を述べることが認められます。
とはいえ、社債管理者の委託契約の中で、異議を述べることに関してこれとは異なる取り決めをすることも認められます。 - 3難文
- 次の条文では、「判明している債権者」に対して情報を伝える必要とされていますが、条文の規定をの規定を社債発行会社に適用する際には、社債管理者や社債管理補助者も対象となります。
次の条文では「判明している債権者」に対して情報を伝えることが必要とされていますが、条文の規定を社債発行会社に適用する際には、異議を述べることが認められているケースでは社債管理者や社債管理補助者も対象となります。
原文
社債管理者にかかる費用は
- 第741条
- 次の費用は、裁判所の許可を必要とはするものの、基本的には社債発行会社が負担してください。
- 社債管理者や社債管理補助者、代表社債権者、決議を執り仕切る人への報酬。
- 彼らがシゴトをするために必要な経費。
- シゴトの経費を支払った日から代金を受け取ることができた日までに生じた利息。
- 彼らに過失がないにも関わらず、シゴト上で発生した損害に対する賠償額。
- 2
- 裁判所への費用負担の許可申立は、社債管理者や社債管理補助者、代表社債権者、決議を執り仕切る人が自分で行ってください。
- 3
- 社債発行会社から社債権者が受け取るべきお金をきちんと受け取ることに成功したら、社債権者よりも先に、彼らへの報酬や経費、利息や賠償額を支払うことが認められます。
原文
社債権者集会の費用
- 第742条
- 社債権者集会に関する費用は、社債発行会社が負担してください。
- 2
- 社債権者集会での決議に対する裁判所への認可の申し立てにかかる費用は、基本的に社債発行会社が負担してください。
社債発行会社や利害関係者からの申立があった場合や、裁判所が必要として職権が発動された場合は、認可申し立てにかかる費用を社債権者集会の招集者や利害関係者の中から指定された人に負担をさせることがあります。
原文
第5編 第1章 組織の形を変えるには
第4編 第2章の2 社債の管理をアシストする人
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