第2編 株式会社について
第二編 株式会社
第2章 株式について
第2章 株式

第2編 第3章 新株を手に入れられる権利
第2編 第1章 株式会社を設立しよう
第1節 この章を通していえること
第一節 総則
株主の責任
- 第104条重要
- 株主が負う株式会社への責任は株式を引き受けた際の対価をあきらめることまでです。
原文
107
株主の権利
- 第105条重要
- 株主には所有する株式に相当する分の次の権利が認められます。
- 一
- 《剰余金》による配当を受けることができます。
- 二
- 会社を清算することになったら、《残余財産》の分配を受けることができます。
- 三
- 株主総会で議決権を行使することができます。
- 2
- 「株主に対して剰余金による配当や残余財産を一切支払わない」と定款に記載しても、無効です。
“決算を経て確定した利益”のことを《剰余金》といい、株主への配当に当てられることになります。
“会社を清算した結果、残った財産”のことを《残余財産》といいます。
原文
108
株式を共有するなら代表者を
- 第106条
- 株式を複数の人で共有することは認められますが、その場合は共有している株主の代表者を決めてください。
代表者を決めたらその人の氏名や法人の名称を株式会社に通知してください。
ただし、株式会社側が同意した場合は、共有のまま社債権者の権利を行使することが認められます。
原文
109
株式会社が決める株式の仕様
- 第107条重要
- 次の株式の仕様を採用するかどうかを株式会社が決めることができます。
- 一
- 《譲渡制限株式》の場合
株式会社の承認なしに株式の譲渡を認めない仕様。 - 二
- 《取得請求権付株式》の場合
株主は株式会社に対して要請すれば株式を買い取ってもらえる仕様。 - 三
- 《取得条項付株式》の場合
所定の条件が達成したら株主の同意がなくても株式会社に持っている株を譲り渡さなければならない仕様。 - 2
- 上記の株式の仕様を採用する場合、それぞれのケースごとに次の情報を株式会社の定款に記載してください。
- 一
- 《譲渡制限株式》を採用する場合
- イ
- 「人から株式を譲り受けるにあたり、必ず会社の承認を得てください。」
- ロ
- 「例外的に譲渡制限の解除を認めるケースは〜のような場合です。」
- 二
- 《取得請求権付株式》を採用する場合
- イ
- 「株主は必要とあれば、株式会社に対して株式を買い取ってもらうことができます。」
- ロ
- 《社債》交付の場合
「株式会社は株式を買い取る代わりに、社債を発行して買い取りを希望する株主に引き渡すことができます。(この社債の仕様と金額の算定方法について詳細を規定します。)」
会社が資金調達のために発行する債権のことを《社債》といいます。
この場合の社債の仕様について詳しいことは第681条第1項に規定されています。 - ハ
- 《新株予約権》交付の場合
「株主は必要とあれば、株式会社に対して株式を引き取ってもらい、対価として新株が発行されたときに新株を受け取ることができる権利を受け取ることができます。(この新株の仕様と金額の算定方法について詳細を規定します。)」
“新株が発行されたときに新株を受け取ることができる権利”のことを《新株予約権》といいます。 - ニ
- 《新株予約権付社債》交付の場合
「株主は必要とあれば、株式会社に対して株式を引き取ってもらい、対価として新株が発行されたときに新株を受け取ることができる権利付きの社債を受け取ることができます。(この社債の仕様と金額の算定方法とこの新株の仕様と金額の算定方法について詳細を規定します。)」
“株式を買い取ってもらう代わりに新株が発行されたときに新株を受け取ることができる権利がついている社債”のことを《新株予約権付社債》といいます。 - ホ
- イ〜ニ以外の財産交付の場合
「株主は必要とあれば、株式会社に対して株式を引き取ってもらい、対価として金銭や新株予約権、社債以外の財産を受け取ることができます。(この財産の内容と金額の算定方法について詳細を規定します。)」 - へ
- 「株式会社に株式を買い取ってもらったり、引き取ってもらえる期限は☓☓年☓☓月☓☓日までです。」
- 三
- 《取得条項付株式》を採用する場合
- イ
- 「所定の条件が達成したら、同意をしようがしまいが、その日のうちに株式会社に持っている株を譲り渡していただきます。」
所定の条件については株式会社が個別に決めることになります。 - ロ
- 所定の条件が達成した後、別の日に株の譲り渡しを実行する場合は、その日付。
- ハ
- 所定の条件が達成したら持っている株の内の一部だけを株式会社に譲り渡すことにする場合は、その一部となる数量。
- ニ
- 所定の条件が達成したら持っている株を譲り渡して、代わりに社債が引き渡される場合は、その社債の種類と金額。
- ホ
- 所定の条件が達成したら持っている株を譲り渡して、代わりに新株引換券が引き渡される場合は、その引換券の内容と金額。
- へ
- 所定の条件が達成したら持っている株を譲り渡して、代わりに新株予約権付社債が引き渡される場合は、その社債の種類と金額。
- ト
- 所定の条件が達成したら持っている株を譲り渡して、代わりに金銭以外の財産が引き渡される場合は、その財産の内容と評価額。
原文
110
種類株式について
- 第108条
- 株式会社は次の事項についてバリエーションやオプションのある《種類株式》を発行することができます。
第九号の事項に関しては、指名委員会等設置会社と公開会社では株式のバリエーションを設定することが認められません。 - 一
- 剰余金の配当のバリエーション
- 二
- 残余財産の分配方法のバリエーション。
- 三
- 株主総会で議決権を行使できないバリエーション。
- 四
- 《譲渡制限株式》
- 五
- 《取得請求権付株式》
- 六
- 《取得条項付株式》
- 七
- 株主総会の決議によって株式会社が特定の種類の株式の全てを取得できるものとする《全部取得条項付種類株式》
- 八
- 種類株式を発行して、種類株主による議決をするテーマが設定されるオプション。
- 九
- 取締役や監査役を決める議決権が付いている株式と、その議決権が付いていない株式が設定されるオプション。
- 2
- 下記のケースに該当する種類株式を発行する場合、それぞれに該当する事項と種類株式の発行数について定款に記載する必要があります。
- 一
- 種類株式により配当金の割り当てが異なる場合、その条件や内容について。
- 二
- 会社を清算することになった際に種類株式により残余財産の分配方法や割合が異なる場合、その方法や内容について。
- 三
- 株主総会で種類株式により議決できるテーマが異なる場合、次の事項について。
- イ
- 議決できる具体的なテーマ。
- ロ
- 株式の種類ごとに議決を行使するに当たっての条件が付く場合、その条件について。
- 四
- 《譲渡制限株式》の場合、株式の譲渡が制限されていて 譲渡を認めるか株式会社の承認を得る必要があること。
- 五
- 株式会社が望めば、株式会社によって持っている株式が引き取られ、別のタイプの株式が交付されるというバリエーションの株式を発行したら、定款に次の事項を記載しておくことが必要です。
- イ
- 株式会社に引き取られ、別の株式が交付されることが株式会社から要求されること。
- ロ
- 株式が引き取られることになる株式のタイプ、このタイプの株式の発行数、引き取られる株式1株と別のタイプの株式との交付比率。
- 六
- ある条件が発生すると、株式会社によって持っている株式が引き取られ、別のタイプの株式が交付されるというタイプの株式を発行したら、定款に次の事項を記載しておくことが必要です。
- イ
- 株式会社に持っている株を譲り渡すことになる条件。
- ロ
- 株式が引き取られることになる条件、このタイプの株式の発行数、引き取られる株式1株と別のタイプの株式との交付比率。
- 七
- 株主総会での決議により、全株取得条項付株式として該当する種類株式は全て株式会社が取得できるようにしたら、定款に次の事項を記載しておくことが必要です。
- イ
- 第171条第1項第1号に規定されている、株主総会で決議が必要となる対価の決め方について
- ロ
- 株主総会を開催するために必要な条件。
- 八
- 株主総会とは別に、特別な種類株式を持つ株主による総会での決議も得なければ議案を決められないようにしたら、定款に次の事項を記載しておくことが必要です。
- イ
- 特別な種類株式の株主総会での決議が必要であることについて。
- ロ
- 議案によっては特別な種類株式の株主総会での決議を必要とする場合、その議案の内容や条件について。
- 九
- 取締役や監査役は、特別な種類株式を持つ株主による総会での決議を経て決まるようにしたら、定款に次の事項を記載しておくことが必要です。
- イ
- 特定の種類株式の株主総会での決議で決められる取締役や監査役の人数
- ロ
- いくつかの種類株式に取締役や監査役の選任についての議決権がある場合、その種類株式ごとの議決権の割当と決められる取締役や監査役の人数
- ハ
- 種類株式に取締役や監査役の選任についての議決権に関するルールを変更するための条件や、条件が達成した場合の変更後の新しいルールについて。
- ニ
- その他、法務省令で規定されていること。
- 3
- 取締役や監査役の選任に関わる種類株式に関するルールを決める場合、その種類株式を発行するまでに一般の株主総会の決議で決めるようにすることが認められます。
この場合は定款に取り決めの方法について記載してください。
原文
111
株主への待遇は平等に
- 第109条
- 原則として、株式会社は同じ種類の株式であれば、1株あたりの株主への待遇は平等でなければなりません。
異なる種類の株式であれば、その内容に準じて1株あたりの株主への待遇は平等でなければなりません。 - 2
- 例外として、株式の譲渡制限をしている非公開会社は次の事項については株主により違う待遇にすることが認められます。
この場合は定款にその内容を記載しておいてください。- 剰余金の配当方法
- 清算時の残余財産の分配方法
- 株主総会での議決権行使の条件
- 3
- この法律では、株主により違う待遇にする場合、特別待遇を受ける株主が持っている株式は特別な種類株式を持っているものとして扱います。
原文
112
《取得条項付株式》に切り替えるためには (1)
- 第110条
- 《取得条項付株式》に切り替えるために定款を変更するには、全ての株主に同意を得る必要があります。
原文
113
《取得条項付株式》に切り替えるためには (2)
- 第111条
- 種類株式を発行している会社で、新たに《取得条項付株式》を発行するための定款の変更を行う場合や、《取得条項付株式》に関する定款の記載内容を変更する場合は、変更に関わる種類株式を所有する全ての株主に同意を得る必要があります。
- 2
- 種類株式を発行している会社で、《譲渡制限株式》を発行するための定款の変更を行う場合や、株主総会の決議によって株式会社がすべての株式を取得できるとする《取得条項付株式》を採用する場合は、次に該当する種類株主による決議を得ることで変更が認められるようになります。
なお、これらの総会で議決権を持つ種類株主が存在しない場合は種類創立総会を開いたり、議決を得る必要はありません。 - 一
- 変更に該当する株式を持っている種類株主。
- ニ
- 株主総会の決議によって株式会社がすべての株式を取得できるとする《取得条項付株式》を持っている種類株主。
- 三
- ある条件が発生すると株式会社がすべての株式を取得できるとする《取得条項付株式》を持っている種類株主。
原文
114
定款の記載があるのに欠員が出ても補充ができないと
- 第112条
- 取締役は特別な種類株式を持つ株主による総会での決議を得て決まるよう定款に記載してあるにも関わらず、欠員が出ても補充ができない状況になったら、この定款の記載は白紙になったものとみなされます。
- 2
- 監査役は特別な種類株式を持つ株主による総会での決議を得て決まるよう定款に記載してあるにも関わらず、欠員が出ても補充ができない状況になったら、この定款の記載は白紙になったものとみなされます。
原文
115
発行可能な株式の総数は
- 第113条
- 定款の発行可能株式の総数に関する記載を白紙にすることはできません。
- 2
- 発行可能株式の総数を減らすために定款の記載を変更する場合、市中に出回っている発行済株式の総数よりも少なくすることは認められません。
- 3
- 次に該当するケースで定款に記載されている発行可能株式の総数を増加する場合、変更前の4倍未満を総数の上限とします。
- 一
- 公開会社で定款の記載を変更して発行可能株式総数を増加するケース。
- ニ
- 非公開から公開会社に変更するために定款の記載を変更するケース。
- 4
- 新株予約権により発行される株式の総数の上限数(Nmax)は次の計算式で決まります。
Nmax ≦ 定款で発行可能としている株式の総数 −(発行済株式の総数 − 《自己株式》の総数)
《自己株式》とは、“株式会社が自分で所有している自分の会社の株式”のことをいいます。
原文
116
発行可能な種類株式の総数は
- 第114条
- 種類株式の発行可能数を変更する場合、その種類株式の発行済みの総数よりも少ない設定数で定款を変更することは認められません。
- 2
- 次の数の合計は、種類株式の発行可能数から発行済数を引いた数が上限値となります。
- 一
- 取得請求権付株式で、その株主から発行を請求される予定の種類株式の数。
- ニ
- 取得条項付株式で、株式会社に引き渡される代わりに発行される種類株式の数。
- 三
- 新株予約権により発行される株式の数。
原文
117
議決権制限株式は株式総数の半数以下に
- 第115条
- 株式総会で加わることができる議決に制限のある株式のことを《議決権制限株式》といいます。
議決権制限株式が発行した全ての株式総数の半数を超えると、株式会社はこれが半分以下となるように対策をしなければなりません。
原文
118
会社の提案に愛想を尽かしたら株式を買い取ってもらおう
- 第116条
- 次に該当する提案を株式会社から受けたケースで、その提案に同意ができずに会社に愛想を尽かした場合、自分の持っている株式の内、次に示された株式を市況価格で株式会社に買い取るよう請求することが認められます。
- 一
- これまでに発行された全ての株式を《譲渡制限株式》に変更しようと株式会社が提案してきた場合、所有するすべての株式。
- ニ
- 一部の株式を種類株式として《譲渡制限株式》や《取得条項付株式》に変更しようと株式会社が提案してきた場合、所有する株式の内のこの変更に該当する株式。
- 三
- 株式会社からの次の提案の実行により所定の種類株式を持つ株主にダメージを及ぼすことが想定される場合、該当する種類株式
- イ
- いくつかの株式を1つにまとめて発行数を減らす《株式の併合》や、1つの株式をいくつかに分割して発行数を増やす《株式の分割》の実施。
- ロ
- 1株あたり平等な割合で新しい株式を無償で振り分ける《株式の無償割当》の実施。
これについては第185条で規定されています。 - ハ
- 総会で1票に該当する単元株式の数について定款の変更。
- ニ
- 株式の新規発行や自己所有株の売却による株式の引受先の募集。
- ホ
- 新株予約権の引受先の募集。
- へ
- 発行予定の新株予約権を無償で振り分ける《新株予約権無償割当》の実施。
これについては第277条で規定されています。 - 2
- 提案に同意ができずに会社に愛想を尽かした株主のことを《反対株主》といいます。
反対株式に該当する具体的なケースは次の通りです。 - 一
- 《譲渡制限株式》への変更など、前項で示されている株主総会での議決を要する議題について次の条件に該当する株主。
- イ
- 株主総会が始まる前に株式会社に対して「反対」の意思を伝えた上で、実際に株主総会でも反対をした株主。
- ロ
- 株主総会で議決権を行使できない株主。
議決権に必要な単元を持たない単元株主や、議決権がないと定款に記載されている種類株式を持つ種類株主などが該当すると思われます。 - ニ
- 第一項の規定に該当しないケースでは、全ての株主が反対株主の対象となり得ます。
- 3
- 第一項に該当する議題を株式会社が株主総会で提案する場合、実際に提案した事が有効になる日の20日前までに株主に対して内容を通知しておく必要があります。
提案した事が有効になる日のことを《効力発生日》といいます。 - 4
- 株主に対して一人ずつ通知する代わりに、新聞やウェブサイトに掲載する公告を行うことでも通知を行ったと見なされます。
- 5
- 株式会社に株式の買い取りを請求するには、効力発生日の20日前からその前日までに買い取りの希望株数を株式会社に伝えてください。
- 6
- 買い取りを希望する株式の株券を持っていたら、株式の買い取りの際にはその株券を株式会社に引き渡してください。
もしその株券を紛失したりしていたら、株式会社に対して紛失したことの登録をしてもらわないと株券の買い取りをしてもらうことはできません。 - 7
- 株主がいったん株式の買い取りを請求したら、株式会社が了承しない限り、これを取り下げることは認められません。
- 8
- 株主が株式の買い取り請求をしても、株式会社がこれに対応する議案を取り下げた場合、買い取りの話自体が無かったことになります。
- 9
- 株式会社以外から株式を手に入れた人は株式会社に対して株主名簿に自分も登録してほしいと要求することができるのですが、株式会社が買取請求により買い取った株式に関しては株主名簿への記載対象とはなりません。
発行されている複数の株式のいくつかをまとめて一つの株式に仕立て直すことを《株式の併合》といいます。
一つの株式を複数の株式に分けて仕立て直すことを《株式の分割》といいます。
原文
119
株式の買取請求の価格の決め方
- 第117条
- 株式の買取請求を受けて株主側と価格面での折り合いがついたら、株式会社は効力発生日から60日以内に支払いをすることになります。
- 2
- 効力発生日から30日が経過しても株式の買取価格が折り合わない場合、株式会社側でも株主側でも、効力発生日から60日以内に裁判所に対して価格決定の申立をすることができます。
- 3
- 株式会社が了承しない限り、株式の買取請求を取り下げることは認められませんが、効力発生日から60日が経過しても裁判所への申し立てがなされなかった場合はこの買取請求を取り下げることが認められるようになります。
- 4
- 裁判所の裁定を待っていたとしても、効力発生日から買い取った株の代価を支払うまでの間、未払いの対価に法定利率による利息が生じます。
この利息は対価の支払いの際に一緒に支払いをしなければなりません。 - 5
- むざむざと利息を払う代わりに、裁判所による裁定価格が決まるまでの間、とりあえず株式会社が公正と主張できる金額を株式の代価として株式を売り払おうとしている株にしに対して支払っておくことも認められます。
- 6
- 買取請求に応じて株を買い取った場合、株式会社は効力発生日から株式の所有者として認められます。
- 7
- 株式の買取請求に応じてもらえた場合、その代金は株券と引き換えに受け取ることができます。
原文
120
想定外の変更にあったら新株予約権を買い取ってもらおう
- 第118条
- 新株予約権を持っているのに、次に該当する内容の定款の変更があった場合、市況価格で株式会社に新株予約権を買い取るよう請求することが認められます。
- 一
- すべての株式が譲渡制限株式に変更される場合、所有するすべての株式。
- ニ
- 一部の株式を種類株式として《譲渡制限株式》や《取得条項付株式》に変更される場合、所有する株式の内のこの変更に該当する株式。
- 2
- 新株予約権がついた社債を持っていて、上記に該当する内容の定款の変更のため新株予約権の買取請求することになったら、社債もいっしょに手放してください。
- 3
- 第一項に該当する定款の変更をする場合、実際に変更内容が有効となる日の20日前までに新株予約権を持つ人に対して内容を通知しておく必要があります。
定款の変更内容が有効となる日のことを《定款変更日》といいます。 - 4
- 新株予約権を持つ人に対して一人ずつ通知する代わりに、新聞やウェブサイトに掲載する公告を行うことでも通知を行ったと見なされます。
- 5
- 株式会社に新株予約権の買い取りを請求するには、定款変更日の20日前からその前日までに買い取り希望の新株予約権の内容と数量を株式会社に伝えてください。
- 6
- 新株予約権の証券を持っていたら、新株予約権を買い取りの際にはその証券を株式会社に引き渡してください。
もしその新株予約権の証券を紛失などしていたら、非訟事件手続法第114条に規定に従って、有価証券の無効を宣言する公示を認めてもらうために裁判所での手続きをしなければ、買い取りをしてもらえません。 - 7
- 新株予約権がついた社債の証券を持っていたら、新株予約権を買い取りの際にはその証券を株式会社に引き渡してください。
もしその社債の証券を紛失などしていたら、非訟事件手続法第114条に規定に従って、有価証券の無効を宣言する公示を認めてもらうために裁判所での手続きをしなければ、買い取りをしてもらえません。 - 8
- 新株予約権を持つ人がいったん新株予約権の買い取りを請求したら、株式会社が了承しない限り、これを取り下げることは認められません。
- 9
- 新株予約権を持つ人が新株予約権の買い取り請求をしても、株式会社がこれに対応する定款の変更を取りやめた場合、買い取りの話自体が無かったことになります。
- 10
- 株式会社以外から新株予約権を手に入れた人は株式会社に対して新株予約権原簿に自分も登録してほしいと要求することができるのですが、株式会社が買取請求により買い取った新株予約権に関しては原簿への登録対象とはなりません。
原文
121
新株予約権の買取請求の価格の決め方
- 第119条
- 新株予約権の買取請求を受けて新株予約権を持っている人と価格面での折り合いがついたら、株式会社は定款変更日から60日以内に支払いをすることになります。
- 2
- 定款変更日から30日が経過しても新株予約権の買取価格が折り合わない場合、株式会社側でも新株予約権を持つ人の側でも、定款変更日から60日以内に裁判所に対して価格決定の申立をすることができます。
- 3
- 株式会社が了承しない限り、新株予約権の買取請求を取り下げることは認められませんが、定款変更日から60日が経過しても裁判所への申し立てがなされなかった場合はこの買取請求を取り下げることが認められるようになります。
- 4
- 裁判所の裁定を待っていたとしても、定款変更日から買い取った新株予約権の代価を支払うまでの間、未払いの対価には法定利率による利息が生じます。
この利息は対価の支払いの際に一緒に支払いをしなければなりません。 - 5
- むざむざと利息を払う代わりに、裁判所による裁定価格が決まるまでの間、とりあえず株式会社が公正と主張できる金額を新株予約権の代価として新株予約権を売り払おうとしている人に対して支払っておくことも認められます。
- 6
- 買取請求に応じて新株予約権を買い取った場合、株式会社は定款変更日から新株予約権の所有者として認められます。
- 7
- 新株予約権の買取請求に応じてもらえた場合、その代金は新株予約権と引き換えに受け取ることができます。
- 8
- 新株予約権付きの社債の買取請求に応じてもらえた場合、その代金は社債と引き換えに受け取ることができます。
原文
122
金で株主を手懐けてはなりません
- 第120条重要
- 株式会社は会社に関することでいかなる株主に対しても金で手懐けてはなりません。
現金でなくても、何らかの利益を与えて手懐けることも許されません。 - 2
- いくら株式会社が見返りを求めなかったと言っても、金や利益を渡していたら、裁判になったら株主をしっかり手懐けていたと見なされます。
どんなに株式会社が渡した金や利益が見返りと比べて小さいものだとしても、裁判になったら株主をがっつり手懐けていたと見なされます。 - 3
- もし株主として株式会社から金や利益を受け取っていたら、耳を揃えて返還しなければなりません。
もし金や利益を受け取った人から何らかの見返りを受けていた人がいたら、それも耳を揃えて返還しなければなりません。 - 4
- もし株式会社が株主に金や利益を渡していたら、取締役一同には連帯責任として、渡していた金や利益と見合う分を株式会社に対して納めなければなりません。
ただし、この中で金や利益供与に全く関わることなく自分の職務をきちんと果たしていた取締役については、連帯責任を免れることが許されます。 - 5
- 金や利益供与に全く関わることなく自分の職務をきちんと果たしていたとしても、他の全ての取締役から同意がもらえないと連帯責任を免れることはできません。
原文
123
第2節 株主名簿
第二節 株主名簿
株主情報をリストアップ
- 第121条
- 株主が決まったら、その情報をリストアップし、下記の情報が株主名簿として登録されます。
- 一
- 株主の名前と住所、法人であれば名称と所在地
- 二
- 株主ごとに所有する株式の数、種類株主であればその種類株式ごとの数
- 三
- 株主ごとに株式を所有した日付
- 四
- 株券が発行されている場合、株主が持つ株式に記載されている株券番号
原文
124
株主名簿に載ったかどうかを
- 第122条
- 自分が本当に株主名簿に登録されたかどうかを確かめるには、株式会社に対して書面かデジタルデータによって名簿に記載された内容の提示を要請してください。
- 2
- 提示される書面には、その会社の代表取締役が署名をするか、記名と押印がなされている必要があります。
- 3
- 提示されるデジタルデータには、代表取締役の署名、記名押印の代わりに法務省令で規定する電子署名をしてください。
- 4
- 株券が発行されている株式会社の場合、それを受け取っていれば株主名簿に登録されていることの裏付けになるので、名簿の提示の手続きは行われません。
《署名》は名前を当人が手書きしたもの、《記名押印》は《署名以外の方法》で記載された名前に印鑑が押されているものです。
法務省令:会社法施行規則第225条(電子署名)
原文
125
株主名簿の管理は誰が
- 第123条
- 株主名簿を作成し、登録や管理をする人のことを《株主名簿管理人》といいます。
株主名簿の管理を誰に任せたかについては株式会社の定款に記載されます。
《株主名簿管理人》は会社の外部の業者に委託してもかまいません。
原文
126
株主を基準日で
- 第124条
- 株式会社が設定する《基準日》に株主名簿に記載されていると、株主の権利を行使できる株主として扱われることになります。
- 2
- 株式会社が基準日を設定するには、基準日に関わる株主の権利を明確に定める必要があります。
この権利の効力は基準日から3ヶ月以内です。 - 3
- 定款に基準日や株主の権利についての定めがないケースで、新たな基準日を定めるには、その基準日の2週間前までに「決めた基準日」と「株主の権利」に関する公告をしてください。
- 4
- 基準日後に株式を譲り渡した場合でも、基準日に株主だった人には株式総会の議決権が認められることになります。
基準日に株主だった人が承諾している場合、株式を譲り受けた人に議決権も譲り渡すことについては、株式会社の判断でそれに同意をしてもかまいません。
基準日の後に新株発行や合併などにより新たに株主になった人の株式総会の議決権については、株式会社の判断で株主の権利として認めることは許されます。
- 5
- 株式を担保として株式会社にお金を貸していて、基準日にそのことが株主名簿に記載されていれば、この人には株主としての権利が認められます。
この権利は株主に対するものと同様のもので、権利の効力は基準日から3ヶ月位内です。
株主名簿に記載されている株式を質草として保有している人のことを《登録株式質権者》といいます。
《登録株式質権者》について詳しいことは第149条第1項に規定されています。
原文
127
株主名簿の保管と閲覧
- 第125条
- 株主名簿はその会社の本社本店で保管してください。
株主名簿の管理を外部の業者に委託している場合は、その業者の事業所で保管してください。 - 2
- 株主名簿に関して、株主と株式会社の債権者であれば次の要請をすることが認められます。
その場合、要請に対応してもらえるのは株式会社の営業時間内に限られます。
また、要請をする際にはその要請の目的を伝える必要があります。 - 一
- 株主名簿が書面で管理されている場合、その書面の閲覧またはコピーを取ること。
- 二
- 株主名簿がデジタルで管理されている場合、デジタルデバイスを使っての閲覧やコピー、プリントアウトをすること。
デジタルデータの出力方法について詳しいことは法務省令で規定されています。 - 3
- 次の迷惑な行為に該当しない限り、株式会社は株主名簿の閲覧やコピーの要請を拒否することは認められません。
- 一
- 閲覧やコピーの目的が、株主自身や債権者自身の権利を確認したり、権利を行使するために必要な情報の確認に該当しない場合。
- 二
- 株式会社に対する業務妨害の目的だったり、他の株主にも関わる利益を損なう目的で閲覧の要請をした場合。
- 三
- 収集した情報を売り飛ばしたり、他人に譲り渡して自分の利益を得ることを目的として要請をした場合。
- 四
- 収集した情報を売り飛ばしたり、他人に譲り渡して自分の利益を得ることを過去2年以内に行ったことがある株主や債権者からの要請の場合。
- 4
- 子会社の株主名簿に関して、親会社の社員は裁判所の許可を得ることができれば、書面などの閲覧やコピーの要請をすることが認められます。
この場合も、その要請の目的を伝える必要があります。 - 5
- 親会社の要請の目的が、第3項に記載の迷惑な行為に該当する場合は裁判所からの許可を得ることができません。
原文
128
株式会社から株主への連絡先
- 第126条
- 株式会社から株主への通知や要請の連絡は株主名簿に記載された株主の住所に送付されます。
予め株主から株式会社に対して別の連絡先を指示していたら、そこに送付されます。 - 2
- 株式会社から株主への通知や要請の連絡は、通常の郵便物が届く位の時間的猶予を経過した時点で届いたものと判断されます。
- 3
- 複数の人たちが株式を共有することになったら、通知の受取先となる人の連絡先を株式会社に知らせてください。
株式会社からの通知や要請の連絡はこの人だけに送付されることになります。 - 4
- 複数の人たちが株式を共有することになったのに、通知の受取先となる人の連絡先を知らせていない場合、株式会社が独自の判断で選んだ代表者宛に通知や連絡が送付されることになります。
- 5
- 株主総会の開催通知について詳しいことは第299条第1項に規定されていますが、この場合の通知先についても上記の規定が適用されます。
原文
129
第3節 株式を手放すことについて
第三節 株式の譲渡等
第1款 株式を譲り渡すことについて
第一款 株式の譲渡
株式は自由に譲り渡して
- 第127条
- 株主は持っている株式を自由に譲り渡すことが認められます。
原文
130
株券があるなら株券を受け取って
- 第128条
- 株券を発行している株式会社の株式を購入した場合、株券を受け取ることにより株主になれたと言えるようになります。
株式会社が自社株の株式を購入した場合は、株券を受け取ろうが受け取るまいが自身で株主と認めればそれで問題にはなりません。 - 2
- 発行される前に譲渡が行われた株券は、株式会社側から譲り受けた人の所に直接届けられるものではありません。
この場合でも発行された株券は株式会社側から譲り渡した人の所に届けられるので、譲り受けた人の手元に株券を届けることについては株式を譲り渡した人が責任を負ってください。
原文
131
株券を発行している会社から株式を手に入れると
- 第129条
- 株券を発行している会社から株式を手に入れたら、そこそこすぐに株式会社から株券を手に入れることができます。
- 2
- 株券を発行しているのが公開会社ではない場合、そこから株式を手に入れても株券を渡すように要請しないと、株式会社が株券をキープしておくことが認められています。
原文
132
株主名簿に記載されると
- 第130条
- 株式名簿に氏名または名称、そして住所が記載されることにより、誰からも文句をつけられることのない株主として認められます。
- 2
- 株券を発行している株式会社の場合、株主名簿に名前や住所の記載がなくても、株券を所有している人は株式会社から文句をつけられることのない株主として認められます。
原文
133
株券を持っていれば株主に
- 第131条
- 一般的に、株券を持っている人は株主としての権利を適法に持っている人だと認められます。
- 2
- 株式会社から株券の発行を受けると同時に、株主としての権利を手に入れることになります。
もちろん、株券を手に入れるための対応をしていないのに手に入ってしまった場合や、なんらかの大きな手違いにより株券が手に入ってしまった場合は株主としての権利は得られないことになります。
原文
134
必ず株主名簿のメンテナンスが行われるタイミング
- 第132条
- 株主からの要請がなくても、次のタイミングで必ず株主名簿のメンテナンスが行われます。
- 一
- 株式が新たに発行されたとき。
- 二
- 自社株買いがおこなわれたとき。
- 三
- 自社株を売却したり、手放したとき。
- 2
- 複数の株式を一つの株式にまとめることを《株式の合併》といいます。
株式の合併が行われると、そのタイミングで必ず株主名簿のメンテナンスが行われます。 - 3
- 一つの株式を複数に分割することを《株式の分割》といいます。
株式の分割が行われると、そのタイミングで必ず株主名簿のメンテナンスが行われます。
原文
135
株式を手に入れたら株式名簿に記載の要請を
- 第133条
- 発行した株式会社以外の人や法人から株式を手に入れたら、その株式会社に対して自分を株主として株主名簿に記載するよう、要請することができます。
- 2
- 自分を株主として株主名簿に記載するよう要請するには、株式を手放した名簿に記載されている前の株主と共同で行う必要があります。
前の株主がすでにお亡くなりになっていた場合や、株式の合併や分割といった法務省令で指定されている事情により、株主名簿に記載されている当人ではない人が株式を引き継いでいるケースでは、この引き継いだ人と共同で要請を行ってください。
お亡くなりになった株主から相続によって株式を引き継ぐことや、株式の合併・分割により株式を引き継ぐことを株式の《一般承継》といいます。
前の株主から株式を売買や贈与によって株式を引き継ぐことを株式の《特定承継》といいます。
原文
136
譲渡制限株式を譲り受けたら株主名簿には
- 第134条
- 譲渡制限株式を誰かから購入したり、譲り受けたとしても、その株式会社に対して自分を株主として株主名簿に記載するよう要請することはできません。
ただし、次のケースは例外として自分の情報の記載を要請できます。 - 一
- 株式会社に譲渡の承認を得てから株式を譲り渡したケース。
- 二
- 譲り受けた株式について株式会社に譲渡の承認得たケース。
- 三
- 株式会社側で指定している買い取り人が譲り受けたケース。
- 四
- 相続で株式の譲渡がなされたり、株式の合併や分割により株式を受け取ることになったケース。
原文
137
子会社は親会社の株式を
- 第135条
- 第2項のケースをのぞき、子会社が親会社の株式を取得することは認められません。
- 2
- 子会社が親会社の株式の取得が認められるのは次のケースに限られます。
- 一
- 子会社が他の会社の全事業を受け継ぐことになった状況で、その会社が親会社の株式を所有していたケース。
- 二
- 子会社が他の会社と合併して、合併相手の会社が消滅することになった状況で、その会社が親会社の株式を所有していたケース。
- 三
- 子会社が他の会社の一部を《吸収分割》した状況で、吸収分割相手が親会社の株式を所有していたケース。
- 四
- 《新設分割》により子会社として設立された会社が、もともと親会社の株式を所有していたケース。
- 五
- 上記の他に法務省令で認めているケース。
- 3
- 親会社の株式を所有することになったら、むやみに遅れることなく準備を整えて、その株式を手放さなければなりません。
事業を分割して、分けた部分を他の会社の一部として合併してもらうことを《吸収分割》といいます。
事業を分割して、分けた部分を新規の会社として設立したり、他の会社と共同で新規の会社を起ち上げることを《新設分割》といいます。
原文
138
第2款 譲渡制限の解除を認めてもらうには
第二款 株式の譲渡に係る承認手続
譲渡制限の解除は
- 第136条
- 譲渡制限株式を譲渡するために、その制限の解除を株式会社に依頼すると、譲渡を認めるかどうかの回答をしてもらえることになっています。
原文
139
譲渡制限株式を手に入れたら株主になれたかどうかの確認を
- 第137条
- 譲渡制限株式を手に入れたら、その株式会社に対して株主として認めるかの確認を依頼してください。
- 2
- 自分を株主として承認するかどうかの確認には、株式を手放した名簿に記載されている前の株主と共同で行う必要があります。
前の株主がすでにお亡くなりになっていた場合や、株式の合併や分割といった法務省令で指定されている事情により、株主名簿に記載されている当人ではない人が株式を引き継いでいるケースでは、この引き継いだ人と共同で要請を行ってください。
原文
140
譲渡制限株式の承認確認を要請するには
- 第138条
- 株式会社に対して譲渡制限株式の譲渡について承認するかどうかの確認を依頼するには、次のケースごとにそれぞれの各号にある情報を提示する必要があります。
- 一
- 第136条に基づき、譲渡制限株式の制限解除を認めるかどうかの確認を依頼する場合。
- イ
- 譲渡を想定している譲渡制限株式の数、それが種類株式の場合はその種類と数。
- ロ
- 譲り受ける予定の人の氏名、または法人の名称。
- ハ
- 株式会社が譲渡制限を解除しない決定をした場合、代わりにその株式会社や指定買取人に株式を買い取りを希望するか否か。
- 二
- 第137条に基づき、手に入れた譲渡制限株式の株主として認めてくれるかどうかの確認を依頼する場合。
- イ
- 手に入れた譲渡制限株式の数、それが種類株式の場合はその種類と数。
- ロ
- 株式を手に入れた人の氏名、または法人の名称。
- ハ
- 株式会社が手に入れた譲渡制限株式の株主として認めてくれない場合、代わりにその株式会社や指定買取人に株式を買い取りを希望するか否か。
原文
141
譲渡制限についての株式会社の意思決定には
- 第139条
- 譲渡制限株式の制限解除を認めるかどうかの確認依頼や、手に入れた譲渡制限株式の株主として認めてくれるかどうかの確認依頼に対する株式会社の意思決定をするには、予め定款に対応策が示されていない限り、株主総会での決議を得る必要があります。
- 2
- 株式会社がその意思決定をしたら、依頼をした人に対してその内容を通知をしてください。
原文
142
譲渡を認めないなら代わりに株式会社や指定買取人が
- 第140条
- 譲渡制限株式の譲渡を認めるかどうかの確認の依頼を受けて、株式会社がそれを認めないという決定をするためには、譲渡の対象となる株式を買い取る必要があります。
この決定をするには次の事項も定めておく必要があります。 - 一
- 対象となる株式を買い取る決定をしたこと。
- 二
- 買取をすると決めた株式の数量、種類株式の場合はその種類と数量。
- 2
- 譲渡の対象となる譲渡制限株式を買い取るとの決定は株主総会での決議を得る必要があります。
- 3
- 譲渡を認めるかどうかの確認を依頼した株主は、譲渡を認めるかどうかを決める株主総会での決議に加わることは認められません。
ただし、この株主以外に議決権を持つ株主が誰もいない場合は、この株主が譲渡を認めるかどうかの決議をしてもかまいません。 - 4
- 株式会社が買い取らない代わりに、譲渡制限株式を買い取ってくれる買い取り人を指定し、その人に買い取らせることも認められます。
この場合、株式の一部だけを買取人に買い取らせることも認められます。 - 5
- 定款に定めがない場合、譲渡の認められなかった株式の買取人を指定するには株主総会での決議が必要です。
原文
143
譲渡制限株式の買取を決定したら
- 第141条
- 株式会社が譲渡制限株式の買取を決定したら、その確認をしてきた人に対して買取対象となる株式の数など決定事項を通知してください。
- 2
- 譲渡制限株式の買取決定を通知するにあたり、本気を示すため買取費用を供託した上で、譲渡の確認をした人に書面で通知してください。
買取にかかる費用は、資産としての株式の価値を計算する方法で求めた1株あたりの単価に買取対象の株式の数をかけた値とします。
資産としての株式の価値を計算する方法は、法務省令で規定されています。
供託は株式会社の本店を管轄する供託所で行ってください。 - 3
- 買取の対象となる譲渡制限株式の株券を所有している場合、買取決定の通知を受け取ったら1週間以内にその株券を供託してください。
供託したら、むやみに遅くなることがない内に、株式会社側に伝えてください。
供託は株式会社の本店を管轄する供託所で行ってください。 - 4
- 期限内に株券を供託をしない場合、株式会社にこの買取契約を解除されてしまうこともあります。
原文
144
指定買取人が決まったら
- 第142条
- 株式会社の代わりに譲渡制限株式を買い取る指定買取人が決まったら、次の内容の通知が送られてくることになっています。
- 一
- 指定を受けた譲渡制限株式の買取人であること。
- 二
- 譲渡制限株式の買取数、種類株式の場合はその種類と買取数。
- 2
- 指定買取人が譲渡制限株式の買取決定を通知するにあたり、本気を示すため買取費用を供託した上で、譲渡の確認をした人に書面で通知してください。
買取費用は、資産としての株式の価値を計算する方法で求めた1株あたりの単価に買取対象の株式の数をかけた値とします。
資産としての株式の価値を計算する方法は、法務省令で規定されています。
供託は株式会社の本店を管轄する供託所で行ってください。 - 3
- 買取の対象となる譲渡制限株式の株券を所有している場合、指定買取人からの通知を受け取ったら1週間以内にその株券を供託してください。
供託したら、むやみに遅くなることがない内に、指定買取人に伝えてください。
供託は株式会社の本店を管轄する供託所で行ってください。 - 4
- 限内に株券を供託をしない場合、指定買取人にこの買取契約を解除されてしまうこともあります。
原文
145
譲渡制限株式の買取を認める通知を受けた後に
- 第143条
- 株式会社から譲渡制限株式の買取を認める通知を受けた後に、その買取を取りやめるためには株式会社の承認をえる必要があります。
- 2
- 指定買取人から譲渡制限株式の買取を認める通知を受けた後に、その買取を取りやめるためには指定買取人の承認をえる必要があります。
原文
146
譲渡制限株式の買取価格の決め方
- 第144条
- 株式会社による譲渡制限株式の買取決定の通知を受けたら、株式会社と協議して譲渡する株式の値段を決めてください。
- 2
- 譲渡制限株式の買取価格がなかなか決まらない場合、裁判所にこの価格を決めてもらうように申し立てを行うことができます。
この申し立ては、譲渡を希望する人が行っても、譲り受けを希望する株式会社側が行ってもかまいませんが、譲渡を希望する人が通知を受けとってから20日以内に行う必要があります。 - 3
- 裁判所ではこの株式会社の資産状況をはじめとする色々な要素を検討した上で、譲渡制限株式の買取価格を決めることになります。
- 4
- 株式会社との協議の途中であっても、申立を受けた裁判所が譲渡制限株式の買取価格を決めた場合は、この決定した価格で売買をしてください。
- 5
- 期限内に裁判所へ申し立てを行わず、株式会社との協議もまとまりそうになければ、譲渡制限株式の買取価格は次の式で算出してください。
買取金額 = 株式会社の純資産額 ÷ 発行した株数 × 買い取りを希望する株数 - 6
- 譲渡制限株式の買取価格が決まったら、株式会社が通知をする際に供託したお金をその支払に当てられます。
- 7
- 譲渡制限株式の買取価格が決まったら、指定買取人が通知をする際に供託したお金をその支払に当てられます。
原文
147
譲渡制限の解除と見なされるケース
- 第145条
- 株式会社との間で特に取り決めをしていない限り、次のケースに該当すると株式会社が譲渡制限を解除したものと見なされます。
- 一
- 株式会社への確認をしてから2週間経っても、譲渡制限の確認結果の通知がなされていないケース。
- 二
- 株式会社から、指定買取人に買取を任せる旨の通知を受け取ってから40日が経過しても、指定買取人から譲渡制限の確認結果の通知がなされていないケース。
この期間を定款で短縮することは認められますが、先延ばしすることは認められません。 - 三
- 上記の他に、法務省令の規定に該当するケース。
原文
148
第3款 株式を質草として
第三款 株式の質入れ
株式は質草として
- 第146条
- 自分が所有している株式を質草として預けてお金を借りることは全く問題ありません。
- 2
- 株券が発行されている場合、質草として預けるにはこの株券を預けることになります。
原文
149
質草として預けたことを証明するには
- 第147条
- 株式を質草として預けたことを証明するため、預け先の名前と所在地を株主名簿に記載してください。
- 2
- 株券が発行されている場合、質草として預けたことを証明するには株主名簿に記載されていることも重要ですが、その株券を預け先が実際に保有していることがより重要です。
- 3
- 民法第364条ではお金を手に入れられる権利を質草として預けることが認められていますが、株式による配当や想定される売却益を質草として預けることは認められません。
原文
150
株主から預かったら
- 第148条
- 株主から株式を質草として預かってお金を貸したら、株式会社に対して次の情報を株主名簿に記載するよう要請しましょう。
- 一
- 名前と住所
- 二
- 質草として預かった株式について
原文
151
株主名簿の記載の質に関する情報の証明を
- 第149条
- 株主から株式を質草として預かったことにより株主名簿に記載されたら、その確認のため名簿の証明書類や証明用デジタルデータを発行するよう要請することができます。
- 2
- 株主名簿の証明書類には株式会社の代表取締役の署名か、記名押印が必要です。
- 3
- 株主名簿の証明用デジタルデータは、株式会社の代表取締役の署名や記名押印の代わりに、法務省令で規定する電子署名をしてください。
- 4
- 株券が発行されている株式会社の場合、株主名簿に質に関する記載も証明書類も必要ありません。
法務省令:会社法施行規則第225条(電子署名)
原文
152
株式会社から株式を質草として預かっている人への連絡先
- 第150条
- 株式会社から株式を質草として預かっている人への通知や要請の連絡は株主名簿に記載されたその人の住所に送付されます。
予めその人から株式会社に対して別の連絡先を指示していたら、そこに送付されます。 - 2
- 株式会社から株式を質草として預かっている人への通知や要請の連絡は、通常の郵便物が届く位の時間的猶予を経過した時点で届いたものと判断されます。
原文
153
質入れ中の株式が変化しても
- 第151条
- 質草となっている株式に次のような変化が起こったとしても、その株式から変化した後の金銭的な価値がその後も質草として引き継がれることになります。
- 一
- 《取得請求権》を使って株主から株式会社に株式が売却されたケース。
- 二
- 《取得条件》が成立したことにより株式会社が株主から株式を買い取ったケース。
- 三
- 《全部取得条項》にあたる株主総会の特別決議により、種類株式の内の1種類に関して発行された全ての種類株式を株式会社が買い取ったケース。
- 四
- 《株式併合》により、他の株式と併合されるケース。
- 五
- 《株式分割》により複数の株式に分割されるケース。
- 六
- 《株式無償割当て》により、新たな株式が無償で割り当てられたケース。
- 七
- 《新株予約権無償割当て》により、新株の予約権が無償で割り当てられたケース。
- 八
- 決算により確定した利益から《剰余金》が分配されたケース。
- 九
- 株式会社が清算されてかき集められた《残余財産》が分配されたケース。
- 十
- 《組織変更》により、株式会社が合名会社、合資会社、合同会社へとスタイルを変えたケース。
- 十一
- 《合併》により、新しい会社に生まれ変わったり、他の会社に吸収されたケース。
- 十二
- 《株式交換》により、新たに親会社となる別の会社の株式に交換されたケース。
- 十三
- 《株式移転》により、新たに設立された株式会社の株式に移転されたケース。
- 十四
- 《株式の取得》により、会社が買収されたケース。
- 2
- 株式のほとんど全てを所有する株主ことを《特別支配株主》と呼ぶことがあります。
特別支配株主には無条件に自分以外の株主が持つ株式を売り渡すよう要請する権利が認められており、これを《株式売渡請求》といいます。
株式売渡請求により、質草になっている株式が特別支配株主に売り渡された場合、特別支配株主から支払われる株式の代金がその後の質草として引き継がれます。
《特別支配株主》について詳しいことは第179条第1項条に、《株式売渡請求》について詳しいことは第179条の2第1項第二号に規定されています。
原文
154
質入れ中に株式が変化したら株式名簿にも
- 第152条
- 株式名簿に、質入れ中と記載されている株式が、取得請求権、取得条件、全部取得条項により株式会社に買い取られたら、その代金が質草となると株式名簿に記載されることになります。
株式名簿に、質入れ中と記載されている株式に対して、株式無償割当てにより新たな株式が割り当てられたら、その新しい株式が質草となると株式名簿に記載されることになります。
株式名簿には質草として預かっている人の名前や法人名とその住所が記載されます。 - 2
- 株式名簿に質入れされていることが記載されている株式が、他の株式と併合されたら、その併合した株式が質草となると株式名簿に記載され、名前や住所が記載されます。
- 3
- 株式名簿に質入れされていることが記載されている株式が、いくつかの株式に分割されたら、分割したそれぞれの株式が質草となると株式名簿に記載され、名前や住所が記載されます。
原文
155
株券の質入れ中に
- 第153条
- 株券の質入れ中に株式無償割当てにより新たな株式が割り当てられたら、その新しい株券も質草となります。
- 2
- 株券の質入れ中に株式が併合されたら、その併合した株券がその後の質草となります。
- 3
- 株券の質入れ中に株式が分割されたら、分割されたそれぞれの株券がその後の質草となります。
原文
156
質入れした株式がお金になるとしたら
- 第154条
- 質入れしていた株式が取得請求権、取得条件、全部取得条項によりその代金が質草になった状況で、その借金が返してもらえない状況になったら、他にも債権者がいたとしても関係なくその代金を弁済に当てることが認められます。
- 2
- 次のケースに該当すると、株式が金銭や別の株式に替わるまでに相応の時間がかかることがあります。
この間、質草として預かっている側としては質草が無価値になることは好ましくありません。
そこで、質入れしている株式が金銭や別の株式に替わるでの間、次の該当する会社に対してその分に相当する金額を供託してもらい、その供託金を質草とすることが認められます。 - 一
- 取得請求権、取得条件、全部取得条項に関する株式会社からの株式の代金の支払い待ちが生じるケース、
株式併合、株式分割、株式無償割当てにより新たな株式の割当を受けるまでに手続き待ちが生じるケース、
剰余金や残余財産の分配を受けるまでに支払い待ちが生じるケース、
買収される株式会社の株の買取代金の支払い待ちが生じるケース、
該当する株式会社に対して供託を求めることができます。 - 二
- 組織変更により株式会社から、合名会社、合資会社、合同会社に変更するケース、変更後の合名会社、合資会社、合同会社に対して供託を求めることができます。
- 三
- 合併したケース、合併により設立される株式会社に対して供託を求めることができます。
- 四
- 株式交換により子会社化されるケース、株式を手に入れて親会社となる株式会社。
- 五
- 株式移転により子会社化されるケース、株式を手に入れて親会社となる株式会社。
- 3
- 特別支配株主にによる株式売渡請求で質草として預かっている株式を売り渡すことになった場合、その代金の支払いを受けるまでの間、特別支配株主に対して相当する金額を供託してもらい、その供託金を質草とすることが認められます。
原文
157
第4款 私の株式は信託財産
第四款 信託財産に属する株式についての対抗要件等
私の株式が信託財産であると主張するために
- 第154条の2
- 株主名簿に信託財産であることについての登録が無い場合、それに関して裁判になるとその主張が認められない可能性が高くなります。
- 2
- 株主名簿に名前と住所が記載されている株主で、その株式が信託財産である場合、そのことを株主名簿に登録するよう株式会社に要請しましょう。
- 3
- 信託財産であることが本当に株主名簿に登録されたかどうかを確かめるには、株式会社に対して書面かデジタルデータによって名簿に記載された内容の提示を要請してください。
株主からの要請がなくても、株主名簿のメンテナンスのタイミングで信託財産であることについての登録も更新されます。 - 4
- 株券が発行されている場合、株主名簿に登録されていなくても、株券を所有していることで株主はそれが信託財産であると主張することができます。
資産家の目的に沿って財産を預かり、管理・運用を任せることを《信託》といいます。
資産家から預かった財産や、その財産を元手にした金融商品や不動産などの管理・運用を任された財産のことを《信託財産》といいます。
原文
158
第4節 自社が発行した株式を自社で買い取るには
第四節 株式会社による自己の株式の取得
第1款 この節全体でいえること
第一款 総則
自社の株式を買い取ることができるケース
- 第155条
- 自社で発行した株式を自社で買い取ることができるのは、次のケースに限られます。
- 一
- 取得条件付株式を発行していて、買い取りの条件に該当する状態となったケース。
- 二
- 株式会社が譲渡制限株式の制限解除を認めない決定をしたことや、譲渡制限株式を手に入れた人を株主として認めない決定をしたことに対して、株主や株式を手に入れた人から株式の買い取りを要請されたケース。
- 三
- 自社で発行した株式を買い取ることについて株主総会で購入する株式の数量や購入予算、購入期間の了解の決議を得られたケース。
- 四
- 取得請求権付株式の株主から株式会社にこの株式の買い取りを要請されたケース。
- 五
- 全部取得条項付種類株式を発行した株式会社が、株主総会で株式購入の費用などの決議を得た上で、この株式の取得を決めたケース。
- 六
- 相続などで譲渡制限株式を入手した人からこの株式の買い取りを要請されたケース。
- 七
- 所定の単元に達しない端数の株式を所有する株主からこの株式の買い取りを要請されたケース。
- 八
- 5年以上に渡って、連絡はつかず、配当も受け取らない株主が所有しているものとして、法的に売却が認められた株式を自社で取得するケース。
- 九
- 合併などの理由で新しい株式に組み替え直した際に、一株に届かなかった半端な分を自社のものとして処理するケース。
- 十
- 他の会社を丸ごと譲り受けた際に、その会社が自社の株式を所有していて、これを引き継ぐケース。
- 十一
- 吸収合併する相手の会社が自社の株式を所有していて、これを引き継ぐケース。
- 十二
- 分割合併する相手の会社が自社の株式を所有していて、これを引き継ぐケース。
- 十三
- 上記の他、法務省令で規定されているケース。
原文
159
第2款 自社株の譲渡に応じてくれる株主を求めて
第二款 株主との合意による取得
第1目 この款を通して言えること
第一目 総則
株主の了解を得る事項
- 第156条
- 株主総会で自社株取得の合意を得るには、次の議案の決議を得てください。
なお、取得の期間は1年以上とすることは認められません。 - 一
- 取得する株式の数、種類株式の場合はその種類と数。
- 二
- 取得するための予算総額。
- 三
- 取得に要する期間。
- 2
- 取得する対象が取得条件付株式や取得請求権付株式、譲渡制限株式などの条件付きだったり、合併による相手先が所有する自社株だったり、端数の株式の清算のためだった場合には株式総会での決議を必要とはしません。
原文
160
購入価格を決めてから
- 第157条
- 自社株の取得の決議を得た上であっても、株主との交渉に臨む前には自社株の譲り受けに関するプランとして以下の事項を決めておく必要があります。
- 一
- 購入する株式の数、種類株式の場合はその種類と数。
- 二
- 一株あたりの単価と数量。
- 三
- 購入のための予算総額。
- 四
- 株式を売り渡す意思のある株主からの申し出を受け付ける期限。
- 2
- 取締役会を設置している会社では、上記の内容は取締役会で決議を得てください。
- 3
- 購入すると決めた株式の単価は、いずれも同じにしなければなりません。
原文
161
全ての株主の中から株式を譲り受けるために
- 第158条
- 株式会社が自社株の購入を決めたら、全ての株主に対して自社株の譲り受けに関する事項を通知します。
- 2
- この通知は必ずしも一人一人に伝えなくても、公告やプレスリリースをすればOKです。
原文
162
譲り渡しても良いと伝えたら
- 第159条
- 自社株購入に関する通知や公告を見た株主の中で株式を手放す気がある株主は、自分が持つ株式の「何株を譲り渡しても良い」と株式会社に伝えてください。
- 2
- 期限内に株主からの譲り渡しOKの知らせを受けた分が予定していた数量または予算内に収まっていれば、この譲渡は成立します。
OKの知らせを受けた総数(A)が予定総数(B)を超えた場合、それぞれの株主がOKをした数量(a)に(B/A)を掛けた数量だけの譲渡が成立することになります。
この場合、1株に満たない数は切り捨てにして扱います。
原文
163
第2目 特定の株主から決め打ちで株式を取得するには
第二目 特定の株主からの取得
他の株主にも株式取得の機会を
- 第160条
- 全ての株主の中から株式を取得する場合と同様に、株式会社が特定の株主だけから株式を取得しようとする場合も、特定の株主から購入する株式の数や、一株あたりの単価と数量そして購入予算総額を株式会社が決めます。
この決定について、全ての株主に対して自社株の譲り受けに関する事項を通知してください。 - 2
- 特定の株主だけから株式を取得することを株主に伝える際には、他の株主からも株式を取得する機会があることを伝える必要があります。
この機会とは次条に規定しています。 - 3
- 株主への通知では、「全ての株主からも株式を取得する機会を用意した上で、特定の株主から株式を取得すること」についての議案を総会にかけることになります、という内容としてください。
- 4
- 特定の株主から株式を取得することについての議案に、この特定の株主には議決権がありません。
ただし、この株主が持つ株式の他には議決権の無い株式しか設定されていない場合に限り、この株主に議決権が認められます。 - 5
- 株式会社が特定の株主から自社株の購入を決めたら、この特定の株主に対して自社株の譲り受けに関する事項を通知します。
特定の株主を決め打ちで株式を買い取ることは他の株主との間で軋轢を生む可能性があるため、この条文にあるような厳格な手続きを踏む必要があります。
原文
164
市場価格よりお値打ちならば
- 第161条
- 株式市場で取引されている自社株を特定の株主から取得する場合、市場価格よりお値打ちに取得できるのであればわざわざ他の株主に対して通知をしたり、他の株主にもこのお値打ち価格で株式を買い上げることを通知する必要はありません。
この場合のお値打ち価格について具体的な金額の算出方法は法務省令で規定されています。
原文
165
一般承継人である株主から株式を取得する場合は
- 第162条
- 次の株式会社や株主に該当しなければ、遺産相続や合併・分割などの理由で承継した株主から株式を取得することは特殊なケースと認められるので、特定の株主の場合と異なり、他の株主からも同様の株式を取得する機会を設ける必要はなく、これに関する通知についても行う必要はありません。
- 一
- 株式の取得について株式会社側の承認を必要としない、公開会社である場合。
- 二
- 一般承継した株主がその株式で議決権を行使した場合。
原文
166
取締役会設置会社が子会社が持つ自社株式を取得する場合は
- 第163条
- 取締役会設置会社については、その子会社が持つ自社株式を取得する際に必要となる議案の決議は取締会で行ってもかまいません。
この場合、他の株主に対する通知やこの議案についての株式総会の開催は必要なく、他の株主から同じ条件で株式を取得する必要もありません。
原文
167
他の株主からは自社株を取得しないと定款に記載しておけば
- 第164条
- 定款に記載をしておけば、特定の株主だけから自社株を取得することになっても、同じ条件で他の株主から自社株を取得する機会は無いことにしてもかまいません。
- 2
- 特定の株主だけから自社株を取得することになっても、同じ条件で他の株主から自社株を取得する機会は無いことにするよう定款を変更するためには、すべての株主の同意を得る必要があります。
原文
168
第3目 株式市場で自社株を買い付けるには
第三目 市場取引等による株式の取得
株式市場で自社株を買い付けるんだから
- 第165条
- 株式総会で自社株取得に関する議決を得た上であれば、株式市場で自社株を買い付けることにはなんら問題はありません。
金融商品取引法第27条の2第六項に規定されている公開市場に準ずるものとして政令で規定されている方法の場合も問題はありません。
わざわざ全ての株主に呼びかける必要はなく、取引毎に異なる条件で買付をしても問題にはなりません。 - 2
- 取締役会設置会社であれば、定款に記載をしておくことで自社株の取得についてわざわざ株主総会を開かずとも取締役会の決議で行うことが認められます。
- 3
- この場合、株主総会で決めることになっている自社株取得の合意を得るための議案は、取締役会の決議で行うことも認められます。
原文
169
第3款 取得請求権付株式や取得条項付株式を株式会社が取得するには
第三款 取得請求権付株式及び取得条項付株式の取得
第1目 取得請求権付株式を株式会社に買い取ってもらうには
第一目 取得請求権付株式の取得の請求
取得条項付株式の株主ならば
- 第166条
- 取得条項付株式の株主は、その株式会社に対してこの株式を買い取ってもらったり、他の資産と交換するよう要請することができます。
他の資産として社債や新株予約権、新株予約権付社債などと交換する場合、これらの帳簿上の評価額が要請を行った日の“会社の体力的に株主に支払いが認められる金額”を超えている場合は、この要請は断られることになります。 - 2
- 取得条項付株式を株式会社に対して買い取りや交換の要請をする場合は、その対象となる取得条項付株式の数をきちんと株式会社に伝えてください。
取得条項付株式が種類株式の場合は、その種類と数をきちんと株式会社に伝えてください。 - 3
- 取得条項付株式の株券が発行されている場合、株式会社に買い取りや交換の要請をする際にはこの株券を株式会社に提示してください。
“会社の体力的に株主に支払いが認められる金額”のことを《分配可能額》といい、詳しいことは第461条第2項に規定されています。
原文
170
請求をされたら、その日の内に
- 第167条
- 株主から取得請求権付株式の買い取りを請求をされたら、その日の内に株式会社はこの株式を引き取ってください。
- 2
- 株主から取得請求権付株式と他の資産との交換を請求されたら、次の資産の種類によってその資産の所有者となります。
- 一
- 社債と交換することになっている場合、その日の内に社債権者に。
- 二
- 新株予約権と交換することになっている場合、その日の内に新株予約権者に。
- 三
- 新株予約権付社債と交換することになっている場合、その日の内に社債権者に、さらに新株予約権者に。
- 四
- 別の種類の株式と交換することになっている場合、その日の内に別の種類の株主に。
- 3
- 別の種類の株式と交換することになっている場合に、交換比率の関係で1株に満たない端数は次のケースによる計算方法で算出した金額が支払われることになります。
- 一
- 市場で取引されている株式の場合、法務省令で規定されている市場価格の出し方に基づく金額で算出。
- 二
- 市場で取引されていない株式の場合、その株式の一株あたりの純資産額で算出。
- 4
- 社債や新株予約権と交換する場合も、交換比率の関係で社債や新株予約権の1単位に満たない端数は市場で取引されているならば市場価格、取引されていなければ一株あたりの純資産額で支払われる金額が算出されます。
原文
171
第2目 取得条項付株式を譲り受けるには
第二目 取得条項付株式の取得
取得条項付株式を取得する日付
- 第168条
- 条件が達成したことにより取得条項付株式を株式会社に譲り渡すことになったら、定款で特別に規定されていない限り、譲り渡しの日付は株主総会で決議をして決めてください。
- 2
- 取得条項付株式の譲り渡しの日付が株主総会で決まったら、その日から2週間前までにその株主やその株の質権を有する人にその日付を通知してください。
取得条項付株式の一部のみが譲り渡しの対象となっている場合は、その数も通知してください。 - 3
- この通知は必ずしも一人一人に伝えなくても、公告やプレスリリースをすればOKです。
原文
172
どの取得条項付株式を取得するか
- 第169条
- 株式会社は色々な種類の取得条項付株式を発行することができますが、実際にこの株式を取得しようとする際にはどの条項に該当する株式を取得するかを決定します。
- 2
- 定款に規定が無い場合、どの取得条項付株式を取得するかについては株主総会の決議が必要となります。
- 3
- どの取得条項付株式を取得するかの決議が得られたら、直ちにその株主やその株の質権を有する人にその日付を通知してください。
- 4
- この通知は必ずしも一人一人に伝えなくても、公告やプレスリリースをすればOKです。
原文
173
条件が達成されたらその日の内に
- 第170条
- 取得条項付株式の条件が達成されたら、その日のうちに持っている株を株式会社に譲り渡すことになります。
取得条項付株式の条件が達成されたら、発行された内の一部のみを株式会社が取得することになっている場合は、次のどちらか遅い方のタイミングで持っている株を株式会社に譲り渡すことになります。 - 一
- 取得条項付株式の条件が達成された日。
- 二
- どの種類の取得条項付株式を取得するかの決議が得られて、その株主やその株の質権を有する人にその日付が通知された日。
- 2
- 取得条項付株式の株主から取得条項付株式の引き渡しの見返りとして他の資産との交換する場合、この株主は次の資産の種類によってその資産の所有者となります。
- 一
- 社債と交換することになっている場合、条件達成した日の内に社債権者に。
- 二
- 新株予約権と交換することになっている場合、条件達成した日の内に新株予約権者に。
- 三
- 新株予約権付社債と交換することになっている場合、条件達成した日の内に社債権者に、さらに新株予約権者に。
- 四
- 別の種類の株式と交換することになっている場合、条件達成した日の内に別の種類の株主に。
- 3
- 条件達成により株式会社による株式取得が確定したら、取得条項付株式の株主やその株の質権を有する人にそのことが通知されます。
また株主総会で取得条項付株式の買い取りに関する決議が行われてそのことが公告されている場合は、あえてこの通知をする必要はありません。 - 4
- この通知は必ずしも一人一人に伝えなくても、公告やプレスリリースをすればOKです。
- 5
- 取得条項付株式を他の資産として社債や新株予約権、新株予約権付社債などと交換する場合、これらの帳簿上の評価額が株式取得の日の“会社の体力的に株主に支払いが認められる金額”を超えていると、取得しないこととなります。
原文
174
第4款 全部取得条項付種類株式を譲り受けるには
第四款 全部取得条項付種類株式の取得
全部取得条項付種類株式は株主総会の議決を得て
- 第171条
- 種類株式発行会社であれば、《全部取得条項付種類株式》を発行することができ、株主総会での議決を得ればいかなる株主からもこの種類株式の全てを取得することが可能になります。
この場合の株主総会では次のことを決議してください。 - 一
- 対象の株式を別の資産と交換したり、買い取る場合、金額に関わる次の事項。
- イ
- 別の種類株式と交換する場合は、その株式の種類と数量、または数量の算出方法。
- ロ
- 社債と交換する場合は、その社債の種類と社債額面の合計、または社債額面の算出方法。
- ハ
- 新株予約権と交換する場合は、その新株予約権の内容と数量、または数量の算出方法。
- ニ
- 新株予約権付社債と交換する場合は、社債の種類と社債額面の合計、または社債額面の算出方法と、新株予約権の内容と数量、または数量の算出方法。
- ホ
- 株式会社が買い取る場合は、支払いの方法や金額、その算出方法。
- 二
- 別の資産と交換する場合、全部取得条項付種類株式の株主に対して1株あたりどれだけの資産と交換できるかの比率。
- 三
- 全部取得条項付種類株式を実際に取得する日付。
- 2
- 1株あたりどれだけの資産と交換できるかの比率は、全部取得条項付種類株式のどの株主にも同じ条件で割り当ててください。
- 3
- 全部取得条項付種類株式の取得について話し合う株主総会では、取締役がその必要性について株主にプレゼンテーションをする必要があります。
原文
175
全部取得条項付種類株式の取得に関する書面
- 第171条の2
- 全部取得条項付種類株式の取得に関して株主総会で決議した内容は、書面またはデジタルデータによって記録し、株式会社の本店で保管されます。
保管期間は次のいずれかの早い日付から、実際に株式を取得してから6ヶ月が経過するまでです。
この決議の内容の記録事項について詳しいことは、法務省令で規定されています。 - 一
- 全部取得条項付種類株式の取得に関する決議を行う株主総会の日の2週間前から。
- 二
- 取得日の20日前までに行われる、全株取得条項付株式の取得に関する株式会社から通知や公告、プレスリリースの日から。
- 2
- 全部取得条項付種類株式の取得に関する決議内容の書面やデジタルデータは、全部取得条項付種類株式の株主であれば株式会社に対して次の要請をすることが認められます。
ただし、対応してもらえるのは株式会社の営業時間内に限られます。 - 一
- 書面を閲覧すること。
- 二
- 書面のコピーをとること。
- 三
- デジタルデータをデジタルデバイスを使って閲覧すること。
デジタルデータの閲覧方法については法務省令で規定されています。 - 四
- デジタルデータのコピーやプリントアウトをすること。
原文
176
取得のやり方が違反していたら
- 第171条の3
- 株式会社による全部取得条項付種類株式の取得のやり方が法令に違反していたり、定款の記載に即していない場合、株主は株式会社に対してこの株式取得を止めるための請求をすることが認められます。
原文
177
不服なら、裁判所に取得価格を決めてもらって
- 第172条
- 全部取得条項付種類株式の取得が決まってしまったとしても、次に該当するような不服を残す株主には、裁判所に全部取得条項付種類株式の取得価格を決めてもらうよう申立をすることが認められています。
- 一
- 株主総会の開催前に株式会社に対して「全部取得条項付種類株式の取得には反対します」と通知をした上で、株主総会での議決では反対票を投じた株主。
- 二
- 株主総会で議決権を行使できない株主。
- 2
- 全株取得条項付株式の取得日となる日から20日前までに、株式会社から全株取得条項付株式の取得に関する通知が行われることになっています。
- 3
- 公告やプレスリリースを配信すれば、一人ひとりの株主に全株取得条項付株式の取得に関する通知をする必要はありません。
- 4
- 全株取得条項付株式の取得後に株主に対する代価の支払いが遅れた場合は、裁判所が決めた取得価格に対して法定利率による利息が発生します。
- 5
- 裁判所の決定が遅れて正式な取得価格が決まるまでは、とりあえず株式会社が適正と判断する価格で株主に支払いをすることも認められます。
法定利率は民法第404条に規定されていて、ひとまず年利3%となっています。
原文
178
全部取得条項付種類株式の取得日になったら
- 第173条
- 全部取得条項付種類株式の取得日になったら、全ての全部取得条項付種類株式を株式会社が買い取ることになります。
- 2
- 全部取得条項付種類株式が次の資産と交換となる場合は、全部取得条項付種類株式が取得日を迎えたら、それぞれその資産の所有者となります。
- 一
- 別の種類株式と交換する場合、その株式の株主に。
- 二
- 社債と交換する場合、その社債の所有者に。
- 三
- 新株予約権と交換する場合、その予約権の所有者に。
- 四
- 新株予約権付社債と交換する場合、そのその予約権の所有者と社債の所有者に。
原文
179
全部取得条項付種類株式を取得したら
- 第173条の2
- 全部取得条項付種類株式の取得が完了したら、株式会社によって取得した株式の種類と数量、法務省令で決められた事項を書面またはデジタルデータに記載したものがまとめられます。
- 2
- 全部取得条項付種類株式の取得に関する書面やデジタルデータは、株式会社の本店で保管されます。
- 3
- 取得日以前に全部取得条項付種類株式の株主だった人は営業時間内に株式会社の本店に出向けば、取得に関する書面やデジタルデータの記録について次の請求をすることができます。
なお、コピーなどにかかる費用は請求した人が負担してください。 - 一
- 記録内容の書面の閲覧。
- 二
- 記録内容の書面のコピー。
- 三
- 記録内容のデジタルデバイスによる閲覧。
デジタルデータの閲覧方法については法務省令で規定されています。 - 四
- 記録内容のデジタルデータのコピーやプリントアウト。
原文
180
第5款 譲渡制限株式を承継した株主に売り渡しの請求を
第五款 相続人等に対する売渡しの請求
定款に、譲渡制限株式の所有者になったらと
- 第174条
- 株式会社は定款に、「相続や一般承継によって譲渡制限株式の所有者になったら、株式会社から要請を受けたらその株式を売り渡すことになる」と規定することが認められます。
原文
181
誰に何株の譲渡制限株式を
- 第175条
- 定款に、譲渡制限株式を承継した人に対する売り渡しについての記載をしているケースで、実際に売り渡しの請求をする場合、その都度株主総会を開催して次の事項についての決議を得る必要があります。
- 一
- 売り渡し請求をする株式の数。
- 二
- 売り渡し請求の対象となる株主の氏名。
- 2
- 売り渡し請求の対象となる株主は、株主総会での売渡請求に関する議案には議決権が認められません。
ただし、この株式会社の議決権がある株式の全てをこの株主が所有している場合に限り、議決権が認められます。
原文
182
売り渡しの請求は1年以内に
- 第176条
- 譲渡制限株式の売り渡し請求は、株主総会での議決の手続きを経た上で、株式会社が譲渡制限株式の承継について情報を把握した日から1年が経過するまでに行なわないと請求ができなくなります。
- 2
- 売り渡しの請求は、必ずしも承継した株式の全部を対象とする必要は無いので、株式会社が希望する買い取り数を明示してください。
- 3
- 実際に売り渡しの請求を行っても、いつでも株式会社の意向でこの請求を取り下げることが認められます。
原文
183
譲渡制限株式をいくらで
- 第177条
- 譲渡制限株式の売り渡し価格は、株式会社とその株主との間で話し合いをして決めてください。
- 2
- 株式会社とその株主との間で話し合いで売り渡し価格が決まりそうない場合、話し合いの当事者は裁判所に対して売り渡し価格を決めたもらうよう申立をすることが認められます。
この話し合いは売り渡しの請求をした日から20日以内に行ってください。 - 3
- 売り渡し価格の申立に対して、裁判所は株式会社の資産状況を初め様々な事情を考慮して価格決定をします。
- 4
- 株式会社とその株主との間で話し合いが煮詰まっていなくても、裁判所から売り渡し価格が決められたら、両者はその決定に従ってください。
- 5
- 両者の話し合いがまとまらず、裁判所に対する申し立ても行われないまま請求から20日を過ぎてしまったら、この請求の話は無かったことになります。
原文
184
第6款 株式を無しに
第六款 株式の消却
株式の数を減らすには
- 第178条
- 自己所有している株式は、株式会社が自身の判断でその株を“無しにする”ことができます。。
どれだけの株式を減らすかは、予め決めておく必要があります、 - 2
- 取締役会設置会社が自己所有している株式を無しにするには、取締役会で減らす数を決議する必要があります。
“株式を無しにして減らすこと”を《株式の消却》といいます。
持ち株を売却したり譲渡することは《株式の処分》といい、別の意味となります。
持ち株を売却したり譲渡することは《株式の処分》といい、別の意味となります。
原文
185
第4節の2 特別支配株主なら株式売渡請求を使って
第四節の二 特別支配株主の株式等売渡請求
特別支配株主なら株式売渡請求を使えば全ての株式を
- 第179条
- 発行株式の90%以上を所有する株主のことを《特別支配株主》といいます。
90%より高い割合の株式を所有しないと《特別支配株主》として認めないようにするには、予め何%以上にするかを定款に記載しておく必要があります。
特別支配株主には《株式売渡請求》をすることができる特権が与えられます。
この特権を使うと、自分以外の株主は、持っているその会社の株式を特別支配株主に売り渡さなければならなくなります。
例外的に、特別支配株主がオーナーを務める持株会社に関しては、その会社の株式を所有していても特別支配株主に売り渡さなくてもよい、とすることが認められています。
特別支配株主がオーナーを務める持株会社のことを《特別支配株主完全子法人》といいます。 - 2
- 株式売渡請求をする際には、新株予約権に対しても売り渡しの請求をすることが認められます。
- 3
- 株式売渡請求をする際には、新株予約権付社債の新株予約権に対しても売り渡しの請求の対象とします。
ただし、請求の対象外とする規定を設けることも認められます。
原文
186
株式売渡請求をするために
- 第179条の2
- 株式売渡請求をするためには次の事項を定めておく必要があります。
- 一
- 「特別支配株主完全子法人については特別支配株主に売り渡さなくてもよい」とする場合は、その詳細内容。
- 二
- 株主たちから売り渡してもらうための株式価格と、その算出方法。
- 三
- 各株主たちに支払う売り渡し対価。
- 四
- 新株予約権売渡請求や新株予約権付社債に対する売渡請求をする場合は、その詳細内容と次の2項目。
- イ
- 特別支配株主完全子法人に対しては新株予約権売渡請求をしないことにする場合は、その詳細内容と該当する子会社法人の名称。
- ロ
- 新株予約権を持つ人たちから売り渡してもらうための予約権に対する価格と、その算出方法。
- ハ
- 新株予約権を持つ人たちに支払う売り渡し対価。
- 五
- 売り渡しを行う期日。
- 六
- その他、法務省令で規定されていること。
- 2
- 種類株式を発行する株式会社に関して、株式売渡請求をする場合は株式のバリエーションごとに売渡請求を行うか、行わないかを決めることが認められます。
- 3
- 各株主たちに支払う売り渡し対価は、株式の価格×株式の所有数に基づく金額にしてください。
原文
187
株式売渡請求を認めるかどうか
- 第179条の3
- 特別支配株主が株式売渡請求を行うためには、株式会社に対して株式売渡請求をするために決めた事項を通知して、株式会社の承認を受けてください。
- 2
- 株式売渡請求と新株予約権売渡請求をするとの通知を受けた株式会社は、特別支配株主に対して新株予約権売渡請求のみを承認するということは認められません。
- 3
- 取締役会設置会社では、株式売渡請求の承認は取締役会での議決を得る必要があります。
- 4
- 株式売渡請求の承認を認めなかった場合、株式会社は特別支配株主に対してその理由をきちんと通知する必要があります。
原文
188
承認したら、株主に通知を
- 第179条の4
- 特別支配株主からの株式売渡請求に関する通知に対して株式会社が承認をしたら、次の対象となる人に対して以下の事項を通知する必要があります。
この通知は株式の売り渡し日として指定した日より20日前までに行う必要があります。 - 一
- 株式を売り渡すことになる株主に対して。
- 株式売渡請求を承認したこと。
- 特別支配株主の名前と住所。
- 特別支配株主完全子法人への売り渡し対象除外の場合はその事項とその名称。
- 売り渡し株式の価格や算出方法、売り渡し対価。
- 売り渡し期日。
- その他、法務省令で規定されていること。
- 二
- 売り渡し対象の株式を質草として株主にお金などを貸している人に対して。
- 株式売渡請求を承認したこと。
- 2
- 株式を売り渡すことになる株主に対する通知は、公告やプレスリリースを配信すれば、一人ひとりに送信する必要はなくなります。
- 3
- 株主に対する通知や、公告・プレスリリースの配信をしたことにより、特別支配株主からの株式売渡請求が行われたこととなります。
- 4
- 株主に対する通知や、公告・プレスリリースの配信に要する費用は、特別支配株主が負担してください。
原文
189
対象となった株式会社で株式売渡請求に関する記録を
- 第179条の5
- 株式売渡請求の対象となった株式会社では、次のことについて書面またはデジタルデータによる記録をその本社で閲覧できるように保管しておく必要があります。
閲覧できるようにしておく期間は、株式売渡請求に関する株主への通知やプレスリリースを行った日から6ヶ月を経過するまで、この株式会社が公開会社ではない場合は1年間を経過するまでです。 - 一
- 特別支配株主の名前と住所。
- 二
- 株式売渡請求における、売り渡し価格や売り渡し日時、特別支配株主完全子法人は売り渡しの対象外とすることなどの取り決め事項。
- 三
- 株式売渡請求を承認したこと
- 四
- その他、法務省令で規定されていること。
- 2
- 株式売渡請求の記録は、株式売渡請求の対象となった株主や質権者であれば次の要請をすることが認められます。
その場合、要請に対応してもらえるのは株式会社の営業時間内に限られます。 - 一
- 株式売渡請求の記録が書面で管理されている場合、書面を閲覧すること。
- 二
- 株式売渡請求の記録が書面で管理されている場合、書面のコピーを取ること。
- 三
- 株式売渡請求の記録がデジタルで管理されている場合、デジタルデバイスを使って閲覧すること。
デジタルデータの閲覧方法については法務省令で規定されています。 - 四
- 株式売渡請求の記録がデジタルで管理されている場合、デジタルデータのコピーやプリントアウトをすること。
原文
190
株式売渡請求を取り下げたくなったら
- 第179条の6
- 株式売渡請求の売渡日の前日までであれば、特別支配株主がこの請求を取り下げることが認められます。
ただし株式売渡請求の対象となる株式会社が請求取り下げを前日までに承諾することが必要です。 - 2
- 請求取り下げの承諾は、取締役会設置会社では取締役会での決議が必要です。
- 3
- 株式売渡請求の対象となる株式会社では取り下げの承諾について可否を決めたら、それを特別支配株主に伝えてください。
- 4
- 株式売渡請求の対象となる株式会社が取り下げを承諾したら、取り急ぎ株主に対して株式売渡請求が取り下げとなったことを通知する必要があります。
- 5
- 株式売渡請求が取り下げの通知は必ずしも一人一人に伝えなくても、公告やプレスリリースをすればOKです。
- 6
- 株式売渡請求が取り下げの通知やプレスリリースが行われたら、全ての株式の売渡請求が取り下げられたことになります。
- 7
- 株主に対する通知や、公告・プレスリリースの配信に要する費用は、特別支配株主が負担してください。
- 8
- 株式売渡請求と新株予約権売渡請求を行う予定で、新株予約権売渡請求だけ取り下げをすることも売り渡し日の前日までであれば認められます。
この場合も、株式会社の承諾が必要で、承諾されたら株主に対する通知やプレスリリースが行われて取り下げが認められることとなります。
原文
191
不利益を受けるおそれのある株主には
- 第179条の7
- 次に該当する、株式売渡請求によって不利益を受けるおそれのある株主は、特別支配株主に対して株式売渡請求をやめるよう請求することが認められます。
- 一
- 株式売渡請求が法令に違反している場合。
- 二
- 株式売渡請求に関する通知や記録の開示がきちんと行われていなかった場合。
- 三
- 株式会社の企業価値と比べて株式の売り渡し価格が著しく不当と思われる場合。
- 2
- 次に該当する、新株予約権付株式も対象とする株式売渡請求によって不利益を受けるおそれのある新株予約権を持つ人は、特別支配株主に対して株式売渡請求をやめるよう請求することが認められます。
- 一
- 新株予約権付株式も対象とする株式売渡請求が法令に違反している場合。
- 二
- 新株予約権付株式も対象とする株式売渡請求に関する通知や記録の開示がきちんと行われていなかった場合。
- 三
- 株式会社の企業価値と比べて新株予約権付株式の売渡価格が著しく不当と思われる場合。
原文
192
売り渡し価格に不審や不満があるなら裁判所に決めてもらいましょう
- 第179条の8
- 特別支配株主側が提示する売り渡し価格に不審や不満があるなら、その価格は裁判所に決めてもらいましょう。
売り渡す側の株主は、実際の売り渡し日の20日前からぞの前日までの期間中、裁判所に対して株式の売り渡し価格を決めてもらうための請求をすることが認められます。 - 2
- 裁判所が売り渡し価格を決定したら、特別支配株主はそれに従わなければなりません。
特別支配株主が決めた価格と裁判所が決めた価格に差異があれば、それに利息を加味した金額を売り渡した側の株主に支払ってください。 - 3
- 裁判所による売り渡し価格が決定するまで、株式会社としては妥当と考える金額で仮払いをしておくことが認められます。
原文
193
実際に売り渡し日を迎えたら
- 第179条の9
- 株式売渡請求が行われて、実際に売り渡し日を迎えたら、特別支配株主には該当する全ての株式の取得が認めらます。
- 2
- 譲渡制限株式や譲渡制限新株予約権が株式売渡請求による売り渡し日を迎えたら、株式会社はこれらの売り渡しを承認したものとして、特別支配株主には該当する全ての株式や新株予約権の取得が認めらます。
原文
194
株式売り渡しに関する記録を書面やデジタルデータに
- 第179条の10
- 株式等売渡請求により株式の売り渡しが行われたら、特別支配株主が取得した株式の数や法務省令で定めている必要事項が株式会社により書面かデジタルデータで記録されます。
- 2
- 取得した株式の数や必要事項の記録は、株式会社が公開会社であれば6ヶ月間、公開会社でなければ1年間その本社で保管されます。
- 3
- 実際に株式を売り渡した人は、株式会社の営業中であれば売り渡しに関する記録について次の要請をすることができます。
- 一
- 記録内容の書類の閲覧。
- 二
- 記録内容の書類のコピー。
- 三
- 記録内容をデジタルデバイスを使っての閲覧。
デジタルデータの閲覧方法については法務省令で規定されています。 - 四
- 記録内容のデジタルデータのコピーやプリントアウト。
原文
195
第5節 株式を減らしたり、増やしたりする方法
第五節 株式の併合等
第1款 株式の総数を絞り込むため
第一款 株式の併合
複数の株式をまとめた株式に
- 第180条
- 複数の株式をまとめて一つの株式に変換したり、所定の数の株式に変換して、発行している株式の総数を絞り込むことを《株式の併合》といいます。
株式会社は自社が発行した株式を併合することが認められています。 - 2
- 株式の併合をするためには、その都度、次の事案について株式総会での議決を得る必要があります。
- 一
- 併合前の発行株式総数と併合後の発行株式総数の比率(比率<1)。
- 二
- 株式の併合が実際に有効となる日、これを《効力発生日》といいます。
- 三
- 種類株式発行会社の場合は、併合する株式の種類。
- 四
- 効力発生日における発行可能株式の総数。
- 3
- 公開会社において株式を併合した結果、従来の発行可能株式の総数が併合した株式数の4倍以上となる場合、発行可能株式総数を4倍未満となるように変更しなければなりません。
公開会社ではない場合は、4倍を超える発行可能株式総数となっても差し支えありません。 - 4
- 株式の併合に関する株式総会では、取締役が株主に対して株式を併合する必要性についての説明が行われます。
株式の併合をして、株主が持っている株の総数が所定の比率にまとめられても、持っている株式の評価値は所定の比率で等倍されるので、理論的には株主にとって得にも損にもならないとされています。
しかし比率によっては新たな1株に満たない端数株式を生むことになり、端数株式を所有する株主の権利を失わせることになるので、そのためのケアが必要となる手続きです。
一方、株式会社にとっては発行株式の総数が少なくなるため、株主や株式を管理しやすくなることが期待できます。
このため、株式会社が苦しいときに実施されることが多く、どちらかといえばマイナスイメージがつきまといます。
しかし比率によっては新たな1株に満たない端数株式を生むことになり、端数株式を所有する株主の権利を失わせることになるので、そのためのケアが必要となる手続きです。
一方、株式会社にとっては発行株式の総数が少なくなるため、株主や株式を管理しやすくなることが期待できます。
このため、株式会社が苦しいときに実施されることが多く、どちらかといえばマイナスイメージがつきまといます。
株式併合をした後、それまでに発行された株式総数の4倍以上の株式が発行されると、それまでの株主の議決権が1/5以下となり、影響力がたいへん小さくなってしまいます。
公開会社の場合、そんなことになるとは知らずに取得する一般の株主への影響が大きいため、制限が設定されているそうです。
なお、非公開会社の場合は、そもそも一般の人はその会社の株式を購入するのが難しく、影響を受けることは無いと判断されるため制限が設定されていないそうです。
公開会社の場合、そんなことになるとは知らずに取得する一般の株主への影響が大きいため、制限が設定されているそうです。
なお、非公開会社の場合は、そもそも一般の人はその会社の株式を購入するのが難しく、影響を受けることは無いと判断されるため制限が設定されていないそうです。
原文
196
日程が決まったら通知やプレスリリースを
- 第181条
- 株式併合の効力発生日が決まったら、その2周間前までに総会で決まった株式の併合の割合や、効力発生日、発行可能株式総数などを株主や、株式を質草としてお金を株主に貸している人に対して通知をする必要があります。
- 2
- 株式併合に関する通知は必ずしも一人一人に伝えなくても、公告やプレスリリースをすればOKです。
原文
197
株式併合の効力発生日を迎えると
- 第182条
- 株式併合の効力発生日を迎えると、株主はそれまで所有してきた株式の数に株式併合の割合をかけたことにより少なくなった数の株式を所有することになります。
- 2
- 株式併合の効力発生日を迎えると、株式会社ではその定款は株式併合に伴って決めた株式発行可能株式総数に書き換えられることなります。
原文
198
株式併合に関する記録の書面やデジタルデータを
- 第182条の2
- 定款で単元数を設定していない株式会社で、株式併合が行われることになったら、株式併合に関する書面またはデジタルデータが株式会社の本社で閲覧できるようになります。
定款で議決権1に相当する株式の単元数を設定している場合に、株式併合によって単元数を満たさない端数が生じるケースでも、株式併合に関する書面またはデジタルデータが株式会社の本社で閲覧できるようになります。
この書面には、総会で決まった株式の併合の割合や、効力発生日、発行可能株式総数などの記録や、総務省令で規定された内容が記載されます。
この期間は、次のどちらか早い方の日付を皮切りに、効力発生日から6ヶ月を経過するまでです。
- 一
- 株式併合に関する議案がテーマとなる株主総会の開催日から2週間前の日。
- 二難文
- 株主総会で決まった株式併合の効力発生日の20日前までに行う必要のある通知の日、または通知の代わりに行う公告の日、このどちらか早い日
- 2
- 自分が所有している株式が併合されることになった株主は、この株式会社の本社に営業時間中に行けば、株式併合の記録に関して次のことを要請することが認められます。
ただし、コピーを取る場合は株主が実費の負担をしてください。 - 一
- 記録書面を閲覧すること。
- 二
- 記録書面のコピーをとること。
- 三
- 記録をデジタルデバイスを使って閲覧すること。
デジタルデータの閲覧方法については法務省令で規定されています。 - 四
- 記録のデジタルデータのコピーやプリントアウトを取ること。
原文
199
株式併合が法令や定款に違反するケースで株主は
- 第182条の3
- 株式併合が法令や定款に違反するケースで、この株主が不利益を受けるおそればある場合、この株主併合を取りやめるよう株式会社に対して要求することが認められます。
原文
200
株式併合によって端数となる株式が出てくる場合
- 第182条の4
- 株式併合に反対していた株主は、株式併合の際に端数となってしまった株式をこの株式会社に適正な価格で買い取ってもらうことが認められます。
- 2
- “株式併合に反対していた株主”のことを《反対株主》といい、次のように定義されます。
- 一
- 株式併合に関する株主総会の前に、株式会社に対して株式併合については反対であることを通知し、さらに株主総会でも議決権を行使して株式併合に反対票を投じた株主。
- 二
- 株式併合に関する株主総会での議決権を行使することができない株主。
- 3
- 株式併合によって端数となる株式の発生が想定される場合、総会に関する株主への通知は2週間前ではなくて、20日前までに行ってください。
- 4
- 端数となる株式を株式会社に買い取ってもらうために行う株式併合反対の通知は、株式併合の効力発生日の20日前からその前日までに行う必要があります。
- 5
- 株式併合となる株式会社の株券を持っていたら、株式会社にこの株券を引き渡す必要があります。
ただし、株券を紛失したことを株券喪失登録簿に記載してある分は引き渡しが無理なものとして認められます。 - 6
- 株式の端数を買い取ってもらうための請求をした場合、これを取り下げるには株式会社の承諾を得る必要があります。
- 7
- 通常の株式の売買では株主名簿に新しい株主の情報が登録されますが、株式併合に伴う株式の買取請求の場合は、株式会社が端数処理として買い取るだけなので、株主名簿への登録をする必要はありません。
原文
201
端数の買取価格を決めて
- 第182条の5
- 株主と株式会社の間で、端数株式の買取価格が合意されると、株式会社から株式を手放した人に対して効力発生日から60日以内にその代金が支払われます。
- 2
- 株主と株式会社の間で、効力発生日から30日以内に端数株式の買取価格が合意できない場合、両者のどちらでも裁判所に対して価格を決めてもらうよう申立をすることが認められます。
この申立は、効力発生日の31日目から60日目までに行う必要があります。 - 3
- 効力発生日から60日が過ぎても買取価格が決まらなかった場合、株主はこの買取請求を無条件で取り下げることができるようになります。
- 4
- 端数株式を買い取った支払いが効力発生日の60日目までに行われなかった場合、遅れに対して法定利率による利息も支払わなければならなくなります。
- 5
- 裁判所による買取価格が決定するまで、株式会社としては妥当と考える金額で仮払いをしておくことが認められます。
- 6
- 買取価格が合意して効力発生日を迎えると端数株式は株式会社の所有となります。
- 7
- 端数株式の株券の買い取りは、株券と代金が引き換えで行います。
原文
202
株式会社により併合により発行された株式の総数の記録
- 第182条の6
- 株式併合の効力発生日を迎えたら、株式会社により併合により発行された株式の総数が書面かデジタルデータで記録されます。
この記録には、総務省令で規定されている事項も記載されます。 - 2
- この記録が記載された書面またはデジタルデータは株式会社の本社で保管されます。
- 3
- 株式会社の株主と、併合の効力発生日に株主であった人は、株式会社の営業時間内に本社に行けば、この記録された書面やデジタルデータについて次のことを要請することが認められます。
- 一
- この記録された書面を閲覧すること。
- 二
- この書面のコピーをとること。
- 三
- この記録されたデジタルデータを閲覧すること。
- 四
- このデジタルデータの出力やデータをコピーすること。
原文
203
第2款 株式の総数を増大させるため
第二款 株式の分割
一つの株式を複数の株式に
- 第183条
- 一つの株式を複数の権利に等分して、それぞれを一つの株式とし、発行するかぶしきの総数を増加させることを《株式の分割》といいます。
株式会社は自社の発行した株式を分割することが認められています。 - 2
- 株式の分割をするためには、その都度、次の事案について株式総会での議決を得る必要があります。
- 一
- 分割前の発行株式総数と分割後の発行株式総数の比率(比率>1)と、その比率を出すために発行数をカウントするための基準日、つまり元々の評価値の株式の最期の日。
- 二
- 株式の分割が実際に有効となる日、つまり新たな評価値の株式としてスタートする日。
- 三
- 種類株式発行会社の場合は、分割する株式の種類。
株式の分割をして、株主が持っている株の評価値は等分されても、持っている株式の総数は等倍されるので、理論的には株主にとって得にも損にもならないとされています。
一方、投資家にとっては取得価格が少なくなるため、投資しやすくなり、結果的に株価の上昇が期待できます。
一方、投資家にとっては取得価格が少なくなるため、投資しやすくなり、結果的に株価の上昇が期待できます。
原文
204
所有している株式は株式分割の基準日が来たら
- 第184条
- 株式分割の基準日に株主名簿に記載されている人は、所有する株式の数に分割の比率(>1)を掛けた数を所有していることになります。
- 2
- 株主総会の議決を得なくても、定款に記載されている発行可能株式総数に株式分割の比率をかけて得られ多数を新たな発行可能株式総数として書き換えることが認められます。
ただし複数の種類株式を発行している場合は、株主総会の議決を得る必要があります。
原文
205
第3款 株主に今よりもっと株式を
第三款 株式無償割当て
所有する比率に応じて株式をプレゼント
- 第185条
- 株式会社が自社所有している株式や、新たに発行した株式を、株主が所有する比率に応じて割り当ててプレゼントすることを《株式無償割当て》といいます。
株式会社では以下の法令に従って《株式無償割当て》をすることが認められます。
株式無償割当てをすると株主にはウハウハのように見えますが、株式の評価値は希薄化しますので、理論的には株主にとって得にも損にもならないとされています。
株式無償割当ては自社株を所有する株式会社自身を対象にすることはできません。
原文
206
株式無償割当てのための取り決め
- 第186条
- 株式無償割当てが行われる際には、株式会社によって次のことが取り決められます。
- 一
- 株主に割当てられる株式の数、または株主に割当てられる株式の数の算出方法。
- 二
- 株式無償割当てでプレゼントされた株式が有効となる日。
- 三
- 種類株式発行会社の場合は、プレゼントされる株式の種類。
- 2
- 株式無償割当ては株式会社が所有する自社株を対象としてはなりません。
- 3
- 株式無償割当てのための取り決めは、予め定款で「株式無償割当ての取り決めは株主総会での議決を必要としない」と定めていない限り、株主総会での議決が必要です。
原文
207
株式無償割当てされた株式が有効となる日を迎えると
- 第187条
- 株式無償割当てでプレゼントされた株式は有効となる日を迎えると、株主の所有として認められます。
- 2
- 株式無償割当てでプレゼントされた株式は有効となる日を迎えたら、むやみに遅れることなく株主や株式を質草としてお金を貸している人に対して割当てられた株式の数が通知されます。
原文
208
第6節 細かい株は気にしなくていいように
第六節 単元株式数
第1款 この節を通して言えること
第一款 総則
複数株で1議決権に
- 第188条
- 1株を株主総会の1議決権とする代わりに、複数株を1議決権と設定することが認められます。
1議決権となる数の株式のことを《1単元》と言います。
単元を設定するには、予め定款に定めておく必要があります。 - 2
- 1単元として設定できる株式の数の最大値は法務省令で規定されています。
- 3
- 種類株式を発行している会社では、株式の種類ごとに1単元となる株式数を設定してください。
会社法施行規則で規定されている“1単元として設定できる株式の数の最大値”は、発行株式総数が200,000株未満の株式会社ではその0.5%まで、 200,000株以上の株式会社では1000株までです。
原文
209
1単元に満たない端数の株式には
- 第189条
- 1単元に満たない端数の株式を所有していても、この分は株主総会での議決権行使ができません。
“1単元に満たない端数株式の株主”のことを《単元未満株主》といいます。 - 2
- 単元未満株主に対して株式会社は定款に定めておくことにより次の規制をかけたり、次の規制の一部をかけることが認められます。
- 一
- 全部取得条項付種類株式を株式会社が買い取ることになっても、その対価をゼロ円とすること。
- 二
- 取得条項付株式を株式会社が買い取ることになっても、その対価をゼロ円とすること。
- 三
- 株式無償割当てをすることになっても、株式の割当の対象から除外すること。
- 四
- 株式会社に対して単元未満株式を買い取ってもらうこと。
- 五
- 会社を清算することになっても、残った会社の財産の割当ての対象から除外すること。
- 六
- 上記の他、総務省令で規定されていること。
- 3
- 定款に定めておけば、株券を発行する際に単元未満の額面の株券は発行しないことが認められます。
原文
210
1単元の株式数を決める必要性のプレゼンを
- 第190条
- 1単元の株式数を決めるための定款変更を話し合う株主総会では、取締役がその必要性について株主にプレゼンテーションをする必要があります。
原文
211
株式分割と同時にやるなら
- 第191条
- 次の一と二の両方に該当する場合は、株主総会における議決権の数が減らされて、株主にとって不利になることはありません。
したがって、1単元の株式数を新たに設定したり、1単元の株式数を増加する場合であっても、株式総会の議決を得ずにこれに関する定款の定めを変更することが認められます。 - 一
- 1単元の株式数の設定や変更が株式の分割と同時に行われること。
- 二
- 次のイ、ロは定款変更前後の株主総会における一般の株主の議決権数を算出するための公式です。
これを比較して、イ:定款変更前の議決権数 より ロ:定款変更後の議決権数 が少なくなっていないこと。 - イ
- 定款変更前の議決権数 = 株式分割後の株式数 / 定款変更後の1単元の株式数
- ロ
- 単元が設定されていなかった場合
定款変更前の議決権数 = 株式分割前の株式数
1単元の株式数が設定されていた場合
定款変更前の議決権数 = 株式分割前の株式数 / 定款変更前の1単元の株式数
この場合の株式数とは、一般の株主が持つ全ての株式数、つまり株式発行総数から自社株を引いた数です。
原文
212
第2款 1単元に満たない株式は株式会社に買い取ってもらおう
第二款 単元未満株主の買取請求
1単元に満たない株式の買取請求
- 第192条
- 1単元に満たない株式を所有していたら、この株式を株式会社に買い取るよう請求することが認められます。
- 2
- 1単元に満たない株式として株式会社に買い取りを請求する際は、所有する単元未満の株式数を伝える必要があります。
- 3
- 1単元に満たない株式の買い取り請求を取り下げるには株式会社の承諾が必要です。
原文
213
買取請求の場合の価格の決め方
- 第193条
- 1単元に満たない株式の株式会社による買取価格は、次のケースに応じて決められます。
- 一
- この株式が株式市場で流通しているケースでは、これに見合うものとして法務省令で決められた算定方法による価格。
- 二
- この株式が株式市場で流通していないケースでは、株主と株式会社との話し合いでまとまった価格。
- 2
- 株主と株式会社との話し合いがなかなかまとまらない場合、裁判所にこの価格を決めてもらうように申し立てを行うことができます。
この申し立ては、株主が行っても、株式会社側が行ってもかまいませんが、買取請求を受けた日から20日以内に行う必要があります。 - 3
- 裁判所ではこの株式会社の資産状況をはじめとする色々な要素を検討した上で、買取請求に対する買取価格を決めることになります。
- 4
- 株式会社との協議の途中であっても、申立を受けた裁判所が買取価格を決めた場合は、この決定した価格で売買をしてください。
- 5
- 期限内に裁判所へ申し立てを行わず、株式会社との協議もまとまりそうになければ、買取価格は次の式で算出してください。
買取金額 = 株式会社の純資産額 ÷ 発行した株数 × 買い取りを希望する単元未満株式の株数 - 6
- 株式会社が買取代金を支払った時からこの単元未満株式は株式会社の所有となります。
- 7
- 株券を発行している株式会社の単元未満株式の売買では、株券の引き換えにその代金を支払ってください。
原文
214
第3款 1単元に満たない端数の株式を1単元にするために
第三款 単元未満株主の売渡請求
1単元に達する分の株式を
- 第194条
- 1単元に満たない端数の株式を所有していたら、この株式が1単元に達する分の株式を手に入れたいと考える人がいるはずです。
しかし、単元が設定されると株式市場では単元未満の端数の株式を入手することはできないので、株式会社に対して売り渡しを請求するくらししか有効な手がなくなってしまいます。
株式会社がこのような請求を認めると定款に記載してあれば、株主はこの売り渡しの請求ができるようになります。
このような形で1単元に達する分の株式を株式会社に売ってくれと請求することを《単元未満株式売渡請求》といいます。
単元未満株式売渡請求は - 2
- 1単元に達するための株式を株式会社に売り渡してくれを請求する際は、所有する単元未満の株式数を伝える必要があります。
- 3
- 単元未満株式売渡請求を受けた株式会社は必ずこの請求に応えてください。
ただし、株式会社が自社株を保有していないとこの請求に応える義務が免除されます。 - 4
- 単元未満株式売渡請求を取り下げるには株式会社の承諾が必要です。
単元未満株式の売り渡し価格の決め方は、買取価格を決める場合と全く同じ手順となります。
原文
215
第4款 単元株式数の減少や株式の単元を廃止は
第四款 単元株式数の変更等
単元株式数を減らしたり、株式の単元を辞めたとしても
- 第195条
- 単元株式数を減らしたり、株式の単元を辞めたとしても、株主が持つ議決権が減るわけではないので、特に不利益になるわけではありません。
したがって、単元株式数を減らす場合や株式の単元を辞める場合は取締役の決定や取締役会での議決により決定することが認められます。 - 2
- は取締役の決定や取締役会での議決により単元株式数の減少や株式の単元を廃止したら、取り急ぎ株主に通知をしてください。
- 3
- 単元株式数の減少や株式の単元を廃止の通知は公告やプレスリリースで行ってもかまいません。
原文
216
第7節 株式会社が株主への通知の義務が
第七節 株主に対する通知の省略等
5年間、通知が届かないことが続くなら
- 第196条
- 株主に対して通知をしても届かないことが5年以上続くようであれば、株式会社はそれ以降の通知や催告する義務を免除されます。
- 2
- 株式会社が通知や催告の義務を免除されたとしても、株主に対するその他の義務はもちろん無くなっていません。
通知を受け取れなくなっても、株式会社の本社所在地宛に連絡をすれば、株主としての権利を主張することができます。 - 3
- 株主の場合と同じように、株式を質草にしてお金を貸している人に対しても、通知が5年以上続くようであれば、その後は株式会社は通知や催告の義務を免除されます。
通知を受け取れなくなっても、株式会社の本社所在地宛に連絡をすれば、株式を質草にしている人としての権利を主張することができます。
原文
217
連絡のつかない株主の株式は
- 第197条
- 連絡が取れないばかりか、配当も受け取ってくれない株主というのは、株式会社にとってはとてもやっかいな問題です。
そのため次の2つの条件に該当する場合、株式会社は該当する株主が所有する株式を競売にかけて、その代金を株主に引き渡すことで、株主としては身を引いていただくことが認められます。 - 一
- 通知をしても届かないことが5年以上続いたために株式会社がそれ以降の通知や催告する義務を免除されていること。
- 二
- 株式会社からの配当を受け取らないことが5年以上続いたこと。
- 2
- 株式市場で流通している株式であれば、やっかいな株式を競売にかける代わりに法務省令の規定に従った価格で売却することが認められます。
株式市場で流通していない株式であれば、やっかいな株式を競売にかける代わりに裁判所の許可を得た方法で売却することが認められます。
裁判所に許可を得るためには、株式を売却することについて取締役全員の同意を得ておく必要があります。 - 3
- やっかいな株式を売却するにあたり、株式会社がこの株式を買い取ることにしてもかまいません。
購入するのは対象となる全ての株式でもいいし、一部の株式でもかまいません。
株式会社がこの株式を購入するには次の2つの事項を決めておく必要があります。 - 一
- 買い取る株式の数。
- 二
- 買い取る株式の総額代金。
- 4
- 取締役会設置会社については、買い取る株式の数や総額代金を決める際には取締役会での決議を得る必要があります。
- 5
- 次の2つの条件に該当する場合、株式会社は該当する株式を質草にしてお金を貸している人が所有する株式を売却して、その代金をこの人に引き渡すことで、身を引いていただくことが認められます。
- 一
- 通知をしても届かないことが5年以上続いたために株式会社がそれ以降の通知や催告する義務を免除されていること。
- 二
- 株式会社からの配当を受け取らないことが5年以上続いたこと。
原文
218
株式を売却してほしくない場合
- 第198条
- 連絡もつかず、配当も受け取ってくれない株主の株式を売却する前に、この株主本人や株主と利害関係にある人に向けて、「不満があれば異議申し立てを受け付けますよ」ということや法務省令で決められた事項について通知と公告をする必要があります。
異議申し立てについては期限を切ることになりますが、少なくとも3ヶ月の猶予期間を設けてください。 - 2
- この場合の通知は、必ず株主名簿に記載されている住所または株主名簿に通知の送付先として登録されている連絡先宛に送付してください。
- 3
- 共有となっている株式の場合の通知は、必ず全ての株主に対して株主名簿に記載されている住所または株主名簿に通知の送付先として登録されている連絡先宛に送付してください。
- 4
- そもそも通知が届かないから株式を売却するわけですが、このケースにおいては必ず異議申し立てを知らせる通知を行ってください。
- 5
- 株券が発行されているケースで、連絡もつかず、配当も受け取ってくれない株主の株券は、異議申し立てを知らせる通知を行い、異議申し立ての受付期間が終了すると株券としては無効となって、ただの紙切れになります。
原文
219
第8節 株式の募集を始めるにあたって
第八節 募集株式の発行等
第1款 決めておくこと
第一款 募集事項の決定等
株式の募集を始める前に
- 第199条
- 株式会社が株式の取得希望者を募集にあたり、次の事項を決めておく必要があります。
- 一
- 募集する株式の数量。
- 二
- 1株あたりの販売価格、または募集する株式の販売総額。
- 三
- 金銭以外での出資を受け付ける場合は、その内容と金銭換算した場合の価額。
- 四
- 株式の代金の支払期間、支払期限。
- 五
- 株式発行により資本金の増加状況や資本準備金について。
- 2
- 株式の募集を始める前に決めておかねばならない事項は株主総会での議決を得る必要があります。
- 3
- 株式の価格が株主に割安すぎだと思われそうな場合は、株主総会で取締役による価格設定の理由についての説明を行う必要があります。
- 4
- 種類株式を発行している株式会社で新たに譲渡制限株式を追加発行するかどうかを決めるには、それまでにこの譲渡制限株式を持つ株主による株主総会で議決を得る必要があります。
ただし、予めこのような決議を得る必要はないことを定款で決めておくことは認められます。
また、追加発行しようとする譲渡制限株式には議決権が設定されていない場合は、この株式の株主による総会決議を得る必要はありません。 - 5
- 一度の募集で発行される株式はいずれも同じ条件で販売される必要があります。
原文
220
細かいことは取締役に委任をしても
- 第200条
- 株式を募集する前に決めておくべきことは、株主総会の議決を得るが必要ですが、日々状況が変わる細かいことまで株主総会を開くのはさすがに手間なので、募集する株式の数の上限と株式の最低価格だけは決めておけば、他のことは取締役に委任をしてもかまいません。
- 2
- 株式の最低価格が株主に割安すぎだと思われそうな場合は、株主総会で取締役による価格設定の理由についての説明を行う必要があります。
- 3
- 取締役に対する委任が有効に認められるのは、株式総会を開いて委任することの議決から1年以内です。
- 4
- 種類株式を発行している株式会社で新たに譲渡制限株式の追加発行に関して取締役に委任するかどうかを決めるには、それまでにこの譲渡制限株式を持つ株主による株主総会で議決を得る必要があります。
ただし、予めこのような決議を得る必要はないことを定款で決めておくことは認められます。
また、追加発行しようとする譲渡制限株式には議決権が設定されていない場合は、この株式の株主による総会決議を得る必要はありません。
原文
221
公開会社は取締役会の議決ではなく市場の価格で
- 第201条
- 公開会社は株式の募集を株式市場で行うことになるため、その価格は市場価格で募集することになります。
そのため募集前に決めておくことについても市場が決めることとなるので、株主総会での議決は必要とせず、取締役会の議決を得ることを必要とします。
また細かいことについて取締役会で決めるという第200条の規定も無視してかまいません。 - 2
- 募集前に決めておくことについて、取締役会において「募集価格は株式市場で公正に決める」とすれば、募集価格を決める必要はありません。
- 3
- 募集前に決めておくことを取締役会で決めた場合、その中で決めた期日の2週間前までに株主に対して決めた事項を通知してください。
- 4
- 株主への通知は、公告やプレスリリースをすればOKです。
- 5
- 金融商品取引法第4条では株式などの有価証券を売り出す際に必要な届け出について規定されています。
この条文の中の第一項から第三項に該当する届け出をしている場合、株主に対する通知やプレスリリースをわざわざする必要がなくなります。
また法務省令でその他の株主が不利にならないケースとして通知を諸略してもかまわないという規定をしていて、これに該当する場合も株主に対する通知やプレスリリースをわざわざする必要がなくなります。
原文
222
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